英国、Brexit後に備え独自の保障措置体制 構築中

2017年9月19日

©英国政府

 欧州連合(EU)からの離脱(Brexit)にともない、欧州原子力共同体(ユーラトム)からも離脱が予定されている英国のG.クラーク・ビジネス・エネルギー・産業戦略(BEIS)大臣(=写真)は9月14日、準備作業の一環として原子力規制庁(ONR)と連携しながら英国独自の原子力保障措置体制を構築中であることを明らかにした。Brexit後も英国が責任ある原子力開発国としての立場を今後も維持していくとともに、英国における保障措置基準や監視体制が将来的に弱体化することのないよう保証していくのが主な目的。英国政府のEU離脱担当省は今年1月、議会に提出した「EUからの離脱通告法案」の説明文書のなかで、ユーラトムからの離脱も含まれると明記した。7月には、EUからの離脱プロセス開始とともにユーラトムからの離脱条項も発動されるとの認識を示しており、核物質と保障措置の問題に関する英国としての交渉方針書を公表。原子力資機材と技術の自由移動を保証するユーラトムからの離脱によって、保障措置関係の取り決めに途絶が生じないよう英国独自の保障措置体制へスムーズに移行する、などの原則をユーラトム側に提案していた。

 クラーク大臣の声明文によると英国政府は、ユーラトムが提供中の保障措置体制と同程度に包括的かつ堅固なものを、ONRが運営する新たな体制として英国に構築することは極めて重要だと確信している。そのため、ユーラトムが設定した既存の基準を遵守するだけでなく、国際社会が国際原子力機関(IAEA)加盟国としての英国に要求する基準をも超える内容とすることを政府は決意。国際的な監視が行われることは新たな体制作りにおける主要部分であり、英国はIAEAとの現行協定と同じ原則に基づいて新たな協定を締結する道を模索している。それによって、IAEAは英国の民生用原子力施設すべてを査察する権限を維持するとともに、保障措置関連の報告書もこれまで通りすべて受領するなど、国際的な確証体制が英国における保障措置活動を今後も盤石なものとして保証することになるとした。

 同大臣はまた、EUとの協議が現在も進行中であり、英国としては現在のユーラトム体制から独自体制にスムーズに移行するためのオプションを複数、模索しているところだと説明した。民生用原子力部門の性質が特殊で重要であるという点から、英国とユーラトム加盟国の間には今後も緊密に連携していきたいとの強い思いが共通してあり、英国としては、これら加盟国と効率的で親しい関係の維持を強く希望。また、それ以外の国々とも、英国とユーラトム加盟国双方の専門的知見や、その共有利益を最大限に活用しているため、同様の関係を維持したいと述べた。現行レベルの保障措置体制と基準を保つことにより、ユーラトム加盟国とは協力の継続に向けて最良の基盤を築くことが出来るとしている。

 クラーク大臣はさらに、協議の結果がどう出ようとも英国政府としては、新体制で少なくとも現行レベルの保証を提供できるよう確約すると明言。そのための法整備を行う方針についても女王陛下が演説の中で表明しており、しかるべき時期に関連法案の提案が行われるとの見通しを述べた。今回の声明文は、そうした重要な背景を議会、および9月の最終週に開催されるEUとの協議に際して提供するのが目的だと説明している。