IAEAの規制協力フォーラム、SMRの許認可プロセス構築について議論

2017年9月26日

 国際原子力機関(IAEA)が主催する「規制協力フォーラム(RCF)」の第8回会合が9月22日、IAEA総会のサイド・イベントとしてオーストリアのウィーンで開催され、安全文化の新しい自己評価手法と、小型モジュール炉(SMR)に特化した許認可プロセスを構築する試験プロジェクトについて討論が行われた。これらの手法やプロジェクトは、加盟国支援の一貫としてIAEAが提供しているもので、安全文化の評価方法を改善する議論の中では関連データを収集する重要性が指摘された。出力が30万kW以下というSMRに関しては、大型炉と比べて建設工期が短くコスト競争力も高いという利点があるため、現在、ロシアと中国およびアルゼンチンが合計4基のSMR建設をすでに進めている。ほかの多くの国でも建設の計画段階に達しているが、出力は小さくても次世代の原子炉設計であり、IAEAとしては、安全・セキュリティ対策上、既存炉と同様の厳しい規制が必要だと認識。世界中で本格的に建設が行われる前に、タイムリーかつ安全文化に重点を置いた、見識の広い許認可プロセスが構築されるよう、安全性と許認可の規制アプローチに関しては加盟各国の規制当局と今後も緊密に連携していくとしている。

 RCFには現在、EC(欧州委員会)と経済協力開発機構・原子力機関(OECD/NEA)を含め、原子力開発先進国や導入中の国、および小規模の原子力発電設備の拡大を検討している国など29か国/機関が参加。これらの国の原子力発電規制当局者が主体となって、IAEAの安全基準をベースとする国際協力や共同活動を通じて規制関係の知識と経験の共有を推進している。IAEAはRCFに対して、運営上や技術上の支援に加えて会議開催といったサービスを提供。安全性の強化で規制関係の支援を求める加盟国からは、支援が必要な部分や不備のある点等について詳細な分析報告書を提出させた上で、加盟国それぞれの事情に合わせた行動計画を策定している。

 今回の会合でIAEAが紹介した安全文化の新しい自己評価手法は、取り組みの第一段階として、それぞれの組織における安全文化の潜在的長所と短所を特定する手助けを行うというもの。IAEAのJ.C.レンティッホ原子力安全・セキュリティ担当次長は、「この手法によって各国の規制当局は最終的に、それぞれの原子力施設の安全性や許認可審査を強化できる」とした。同会合ではこの他にも、安全文化の評価手法を改善する様々なメカニズムが発表され、IAEAのG.ソアレ原子力安全担当官は「アンケートやインタビュー、文書の審査等を通じたデータ収集によって、評価プロセスの初期段階が形づくられる」と指摘。ただし最も重要な点は、収集したデータを分析することだと強調した。
 
 SMRの許認可関連では、SMR特有の主要な規制上の問題を特定し、これを理解した上で取り組むための「試験プロジェクト」をRCFで支援しているとIAEAは説明した。このプロジェクトに参加する規制当局者は、SMRの安全確保において首尾一貫した独自レベルの安全メカニズムを保有することがいかに重要であるかを議論。多くのSMR開発業者は、設計によってこの問題に対処する方法を提案したが、「試験プロジェクト」では特に、そうした提案に段階的に対応する規制アプローチの活用について討論を行い、要件をカスタマイズしていくとした。参加者はまた、SMR用の緊急時計画区域について戦略や慣行関連の情報を交換。固有の安全性を有するとともに事故時の進展が遅いというSMR特有の特徴に基づき、開発業者は大型炉よりも小さい区域の設定を提案した。しかし、RCFの参加メンバーは現在、既存の戦略や慣行を評価中であり、それに基づいてこの問題に関する共通のアプローチを開発していくことになる。