韓国政府、産業界の原子炉輸出を積極的に支援

2017年10月16日

 韓国の産業通商資源部(MOTIE)は10月10日、国内原子力産業界による原子炉輸出を政府としては強力に後押ししていく方針だと発表した。白雲揆MOTIE長官が主宰する「原子力輸出戦略諮問会議」を同日にソウルで開催した際、輸出プロジェクトを成功に導くため、利益とリスクの両面について評価したいと同長官が述べたもの。国内では文在寅大統領が宣言した脱原子力政策を推し進める一方、海外への輸出についてはアラブ首長国連邦(UAE)での受注成功例を弾みに、韓国政府と産業界および金融機関が力を合わせて継続していく考えを明確に示した。
 また、国営企業の韓国水力・原子力会社(KHNP)は同日、韓国国内とUAEで建設中の140万kW級・次世代PWR設計「APR1400」を欧州向けに改修した「EU-APR」が、欧州電気事業者要件(EUR)の認証審査をパスしたと発表した。EURは欧州の電力企業16社が定めた安全基準で、これによりKHNP社は「欧州以外でEURを満たす必要がある南アやエジプトなどへの輸出が可能になり、原子力輸出市場を多様化することができる」と指摘。また、欧州では近年、英国、チェコ、スウェーデン、ポーランド等で原子炉新設の需要が増しているとした上で、EUR認証審査には新設意志を持つ欧州事業者も参加していたことから、今後韓国が原子炉新設プロジェクトを受注する可能性が高まったと強調している。

 MOTIEによると、同諮問会議には国営エネルギー企業や建設会社、金融機関を含む17社の代表が出席した。議題は、原子炉販売の国際的な市場環境や潜在的な市場における戦略、輸出プロジェクトにともなう財政リスクの低減方法などで、MOTIEとしては原子炉輸出によって、韓国の原子力産業界がこれまでに培ってきたノウハウや資産を、効果的に活用する機会がもたらされるとの認識を提示した。白雲揆長官も、英国やチェコ、サウジアラビアの原子炉新設プロジェクトでは、韓国企業が勝利を納められるよう政府が支援すると明言。これらの国々の政府とは、今月中にも様々な政府高官会合を開催する計画で、韓国の原子力技術を売り込むとともに、原子力商取引における協力方法について協議するとした。同長官はまた、各国の市場に合わせて、緊密に協力し合うための輸出戦略を案出するよう、17社に要請したことを明らかにしている。

 同諮問会議ではこのほか、原子炉輸出に関する意見と情報の交換が行われ、韓国電力公社(KEPCO)と子会社のKHNP社は、UAEで順調に進展している4基の原子炉新設プロジェクトに言及。韓国原子力産業界の能力の高さを強調した。韓国輸出入銀行(EXIM)は、輸出プロジェクトにおける財政リスクの低減方法について発表。他の複数の金融機関とも協力することが重要だと述べた。韓国国際原子力協力協会は、国際的な原子炉市場を中国やロシアの企業が独占しつつあるなかで、韓国企業は適切なプロジェクトを選別し、それに集中すべきであるとの見解を示した。