スイス、深地層処分場候補エリアのボーリング調査申請についてパブコメ開始

2017年11月8日

 スイスにおける放射性廃棄物処分の実施主体である放射性廃棄物管理協同組合(NAGRA)は11月1日、使用済燃料など高レベル放射性廃棄物(HLW)の深地層処分場建設候補エリアの1つ、北部レゲレン内の5地点におけるボーリング調査実施申請書を、30日間のパブリック・コメントに付すと発表した。

 NAGRAは、3段階で構成される同処分場の建設サイト選定プロセスにおける第2段階として、2014年12月にジュラ東部とチューリッヒ北東部を優先候補エリアに特定。スイス連邦原子力安全検査局(ENSI)は2日付けで両エリア内のそれぞれ8地点について、環境に悪影響を及ぼすことなくボーリング調査を実施できるとの判断を示したが、予備の候補エリアである北部レゲレンについても立地の潜在的可能性が残っている。このためNAGRAは、第3段階に入ってから同様の調査が必要になることを見越し、同エリア内の6地点でボーリング調査を実施する申請書を今年8月、連邦エネルギー庁(SFOE)に提出していた。

 ボーリング調査では、試掘抗を掘って地下岩盤の地質学的および水文地質学的特性を評価する。このため、パブコメ期間中にNAGRAは、同調査の実施地点で自治体やメディアを対象としたセミナーを開催するほか、申請書およびその根拠を示した文書を公開して住民等の関係者から意見を聴取。NAGRAスタッフも待機して、住民の疑問に答える方針だ。同調査を行うには、原子力法に基づいて地点ごとにスイス連邦政府環境運輸エネルギー通信省(DETEC)の許可を得る必要があり、NAGRAとしては2018年末までに全地点で許可を取得したいとしている。

 スイスでは原子力法に基づき、HLWのみならず低中レベル放射性廃棄物も深地層に処分する方針で、サイト選定プロセスは連邦政府による指導の下、選定基準を定めた「特別計画」に沿ってNAGRAが行っている。2011年に終了した同プロセスの第1段階では、HLW深地層処分場として適性のある母岩など、地質学的に適切な6つのサイト候補エリアを選定。第2段階では、関係自治体や監督官庁、一般市民など約100名で構成される「地域会議」が選定作業に参加して、優先候補エリアを2つに絞り込んだ。

 第3段階においては、最終的な候補エリアを1つ決定するため、さらに詳細な調査をこれらのエリアで行う予定で、NAGRAはそのための3次元地震探査をすでに、優先候補エリアのジュラ東部とチューリッヒ北東部、および予備候補エリアの北部レゲレンで実施。ボーリング調査については、掘削地点での準備作業と掘削機器のセッティングで約3か月かかるほか、試掘抗1本の掘削にも数か月から1年を要するため、NAGRAは現在の第2段階において実施許可の取得手続を進めている。有力候補2エリアにおけるボーリング調査の実施許可は、すでに2016年9月に申請済みで、今年初頭からパブコメに付されていた。実際の掘削作業は、第2段階の終了時にNAGRAが提案する事項を連邦参事会(内閣)が承認した後、2019年に開始される見通しである。