東芝保有の英NuGen社株売却で韓国電力が優先交渉権獲得

2017年12月7日

 韓国政府の12月7日付けポータル・サイトによると、東芝が英国で原子力発電所の新設事業を行うために保有していたニュージェネレーション(NuGen)社の株式100%取得について、韓国電力公社(KEPCO)が優先交渉対象者に選定された。
 西カンブリア地方セラフィールド近郊のムーアサイド原子力発電所建設計画(360万kW分)に関し、KEPCOの原子炉受注が確定したわけではない。同社は今後、NuGen社株の買収に向けた本格的な交渉を東芝と開始する。また、韓国政府による予備的な妥当性調査やNuGen社の所有者変更に関する英国政府の承認も必要で、東芝との株式売買契約が成立してから同社株の買収が行われる点を強調した。

 同計画で東芝は、ウェスチングハウス(WH)社製の120万kW級「AP1000」を3基、2024年以降に完成させる予定だった。しかし、今年3月にWH社が米国の倒産法適用を申請したのを受け、NuGen社株の40%を保有していた仏国のENGIE社が4月に撤退を表明。東芝は7月に同社からの株式買取り手続を完了した。経営再建を目指す東芝がNuGen社株の売却先を模索するなか、中国広核集団有限公司(CGN)も出資を検討中との報道があったが、英ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)と韓国産業通商資源省(MOTIE)は11月28日、同計画を含めた英国内の新設計画に対する韓国企業の参加支援で、両国政府が協力覚書を締結したと発表していた。

 KEPCOが優先交渉権を得たことについて韓国政府は、「これまでに国内とアラブ首長国連邦(UAE)で同社が発揮した優秀な技術力と施工能力を、原子力先進国である英国で示す可能性が開かれた」と評価。国内では文在寅大統領が脱原子力政策を進める一方、海外への輸出は政府として後押ししていく方針が改めて示された。KEPCOも現地のメディアに対し、「すべての手続が順調に進めば、2018年上半期に売買契約を締結し、ムーアサイド計画に本格的に参加出来る」との抱負を述べた模様。KEPCOがNuGen社を取得した場合、同計画の採用設計は、KEPCOの企業連合がUAEで建設中の140万kW級PWR「APR1400」に変更される見通しで、UAEの例に続いて韓国が原子炉輸出を成功させる可能性が高まったと見られている。

 APR1400設計は今年10月、欧州の電力16社が原子炉の安全基準として定めた「欧州電気事業者要件(EUR)」をクリア。欧州域内および南アフリカやエジプトへの原子炉輸出が可能になったものの、英国では原子力規制庁(ONR)の包括的設計審査(GDA)を受ける必要がある。ムーアサイド計画で採用予定だったAP1000に対し、ONRは今年3月に設計容認確認書(DAC)を発給していたが、APR1400への変更により、同計画は着工前までにDACの取得でさらに4~5年を要することになる。