米エネ省、先進的原子力技術の開発支援で3,000万ドル以上投資

2017年12月11日

 米エネルギー省(DOE)のR.ペリー長官は12月7日、先進的な原子力技術の開発支援金として3,000万ドルを投資すると発表した。
 産業界の主導で進められている革新的な原子炉設計および関連技術の中でも、原子力発電の将来的な経済見通し全体を改善する可能性のあるものについて、官民が費用分担で連携するプロジェクトの募集提案を同日に発出。国内原子力産業の競争力強化と技術革新の促進支援を目的に、今年10月から始まった2018会計年度の連邦予算から議会の承認状況に応じて3,000万~6,000万ドルを拠出し、新型原子炉設計の初号機の実証準備プロジェクトや新型原子炉の開発プロジェクトを進めるとしている。支援希望者の申請は年間を通じて受け付ける計画で、DOEの投資総額は5年計画で約4億ドルに達する見通し。支援対象プロジェクトは四半期毎に選定する予定で、来年1月9日に詳細に関するオンライン・セミナーを開催した後、同月末に初回の申請受付けを締め切るとしている。

 DOEが支援対象を選定する主な枠組としては、「新型原子炉設計の初号機に関する実証準備プロジェクト」がある。具体的にDOEは、既存炉について運転性能改善と運転期間延長のための革新的技術開発を支援する一方、米国で開発された新型原子炉設計を市場に送り出し、建設・運転につなげるための許認可活動を支援する方針。2020年代半ばから後半までに建設可能な新型原子炉設計1~2件が対象で、1件あたりの支援額は1,000万~4,000万ドルを予定している。
 また、「新型原子炉開発プロジェクト」により、米国の広範な原子炉設計および関連技術の技術革新と競争力を直接的に向上させる計画。会計年度毎に費用分担による協力契約を3~6件のプロジェクトについて産業界のパートナーと締結し、商業化と性能向上の可能性がある新型原子炉の概念について支援協力を行う。1件あたりの支援額は50万~1,000万ドルとなっている。
 
 DOEは原子力によって、エネルギー供給や環境保全、および国家セキュリティ上の必要性を満たせると認識しており、様々な形で先進的な原子力研究開発プロジェクトに対する支援を実施。全米の大学等に対する支援イニシアチブである「原子力エネルギー大学プログラム(NEUP)」や「原子力エネルギー実践技術(NEET)」などのほかに、2015年からは「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」を創設した。同イニシアチブでは、DOE所有の複合施設や国立研究所の設備、人材、物質、データ等の利用窓口が設定されており、DOEはこれにより、既存原子炉で安全かつ信頼性のある経済的な運転を保証するための支援、および先進的な原子炉設計の商業化に資する技術面、規制面での支援を原子力コミュニティに提供。今回の投資計画も、GAINの重要な構成要素という位置付けになる。

 ペリー長官は、「先進的原子力技術開発の早い段階で、的を絞って投資を行うことで、将来にわたって盤石な原子力産業を下支えすることになる」と指摘。クリーンかつ送電網の信頼性を高める能力もある電源から今後も恩恵を得ていく上で、今回の投資は重要なステップになるとの認識を示した。また、支援対象に選定されるためのコンペを通じて、米国企業がその他の連邦政府機関や官民の研究所、高等教育組織などと連携し、革新的技術の開発に必要な専門的知見を共有するよう奨励したいとしている。