エジプト、初の原子力発電所建設でロシアとの契約に調印

2017年12月12日

 エジプトの原子力導入計画に協力しているロシアの原子力総合企業ロスアトム社は12月11日、エジプト北部のエル・ダバで4基の120万kW級ロシア型PWR(VVER)を建設するための契約書に両国政府が調印したと発表した。建設工事の開始に必要な一連の契約書のうち、最終文書となる「通知条項」への署名を、エジプト電力・再生可能エネルギー省のM.シャーキル大臣とロスアトム社のA.リハチョフ総裁が終えたもので、建設計画は2026年の初号機起動に向けて大きく動き出した。
 通知条項への署名は、ロシアのV.プーチン大統領がカイロで同国のA.F.シシ大統領と会談したのに合わせ、両大統領立ち会いの下で行われた。現地の報道によると、署名式典の模様はエジプト国営テレビが生放送で国民に伝えたという。

 両国が締結した複数契約の内容についてロスアトム社は、原子炉4基の建設に加えて、発電所が稼働する全期間を通じて同社が原子燃料を供給する予定だと説明。これにより、エジプトでは60年にわたって競争力のある電力価格の維持が可能になるとした。同社はまた、エジプト側の人材育成も実施する方針で、同発電所の運転開始後10年間は運転・保守に関する支援を提供。ロシアとエジプトの両国内で発電所従業員の訓練が行われるほか、今後数年間に数百名のエジプト学生がロシアで原子力関係の学科を学ぶことになる。さらに、もう1つの契約の一部として、ロシアは使用済燃料の専用貯蔵施設をエジプト国内で建設する計画。併せて貯蔵用コンテナも供給する考えを明らかにしている。
 同社はこのほか、同建設計画ではロシア企業が数多くの契約を受注予定であるものの、エジプトにおける原子力インフラ開発と国産化率の拡大にも協力する方針であることを強調した。同建設計画はエジプト産業界が一層発展する要因となり、実際に数十社が同計画に関わることになるとロスアトム社は予測。初号機の建設における国産化率は少なくとも20%で、後続の原子炉についてはさらに上昇するとの見方を示している。

 エジプト政府は2015年11月、同建設計画に関する2国間協力協定(IGA)をロシアと締結しており、2016年5月には、ロシア政府から最大250億ドルの融資を年3%の低金利で受ける内容の大統領令を公布した。これにより、建設工事と関連サービスおよび機器の輸送など、同計画に必要な資金の85%をカバーする。残りの15%をエジプト側が調達する予定だが、エジプト政府は約35年間で受けた融資を完済する計画。これには民間からの投資や、完成した原子炉からの売電収入を充てると見られている。

 なお、ロシアでは12月8日、同建設計画のレファレンス・プラントとなるレニングラード原子力発電所Ⅱ期工事1号機(PWR、117万kW)で、最初の臨界条件達成に向けたプロセスが開始された。同炉では近代的な第3世代+の設計を採用しており、ロスアトム社は福島第一原子力発電所事故後に国際原子力機関(IAEA)が示した要件をすべて満たすと強調している。