韓国政府、原子力R&D戦略で廃止措置関連の技術開発、輸出支援強化へ

2017年12月21日

 韓国の未来創造科学部(省)を改編して7月に設置された科学技術情報通信部(MSIT)は12月19日、文在寅政権による原子力研究開発の方向を示した「将来的原子力技術の発展戦略」を公表した。
 5つの主要戦略、すなわち(1)原子力安全技術の改善、(2)廃止措置技術の研究開発強化、(3)医療分野と、(4)環境分野における放射線技術の利用拡大、(5)原子力技術の輸出支援強化--を重点的に推進するという内容で、「原子力研究開発によりエネルギーの転換政策を下支えしていく」と説明。将来的な研究開発パラダイムを、国民の生命や安全の確保を中心としたものにシフトし、原子力分野で総合的な技術力を確保するとしており、このために2018年に総額2,036億ウォン(約213億円)を投資する方向で予算要求するほか、「原子力研究開発5か年計画」を修正する方針を明らかにしている。

 MSITによると、同戦略は今年8月以降、産官学の研究者を対象とした説明会や原子力学科長の協議会などにおける意見集約、原子力利用開発専門委員会での検討等を経て策定された。(1)の原子力安全技術の改善については、稼働中の原子力発電所で安全性確保のための技術を高度に改善するとともに、使用済燃料の安全な管理で技術開発を推進するとした。
 また、廃止措置の中心的技術の開発、廃止措置インフラの拡充を通じて、(2)に掲げた廃止措置技術を高度化し、海外市場への進出を図る。具体的には産業通商資源部(MOTIE)との連携により、重要な基盤技術38件(MSIT担当)と商業化技術58件(MOTIE担当)の開発を2021年までに完了する計画。安全性改善と廃止措置技術の研究開発合計で2018年度に687億ウォン(約72億円)を投資することになる。

 (5)の原子力技術の輸出支援に関しては、中小型炉の輸出実績を元に、ハードウェアとサービスを組み合わせた海外進出を支援するとMSITは強調。原子力発電所用の国産燃料や解析用ソフトといった要素技術の輸出を支援していくとした。この関連でMSITは、12月9日から次官がサウジアラビアやヨルダン、アラブ首長国連邦(UAE)などの中東諸国を歴訪し、輸出に成功した熱出力0.5万kWの「ヨルダン研究訓練炉(JRTR)」の利用拡大など、ヨルダンと原子力協力の強化について協議したことを明らかにした。
 また、サウジアラビアとは中東諸国向けモジュール式小型炉「SMART」を建設する可能性の模索で、2015年に協力覚書を締結していたことから、建設前の設計やその後の事業展開について議論を行った。同国におけるSMART建設の実現に向けて政府が支援し、その建設・運転等に韓国企業が参加できるよう、同国との協力を強化していくとしている。

 このような戦略で示された研究開発の推進方向を具体化するため、MSITは短期的な課題を2018年度の原子力研究開発事業施行計画に反映させる方針。2021年までの「5か年計画」も2018年上半期までに修正するとともに、研究開発事業の構造改革も進めるとした。韓国原子力研究所(KAERI)は原子炉の利用研究と基礎研究強化の方向で組織改編し、未来志向型の研究機関を目指す。
 また、「原子力安全研究専門人材育成事業」を新規に起ち上げ、大学における安全技術教育を強化。原子力人材育成の方向性を、安全技術中心に切り替えていく。さらに、原子力技術の産業化や他分野への利用拡大、輸出促進を目的に、国内外の有望なパートナーとの協力関係も強化する予定だとしている。