英ロールス・ロイス社、米原子力発電所にデジタル式効率性向上サービス提供

2018年1月19日

 英国のロールス・ロイス社は1月16日、米ニュージャージー州のセーレム原子力発電所(117万kWのPWR×2基)と隣接するホープクリーク原子力発電所(約130万kWのBWR)に対し、データの革新的なデジタル分析に基づく効率性向上サービスを提供することになったと発表した。
 同社が開発した「T-104サービス」は、原子力発電所における作業の効率化と保守点検活動の合理化に主眼を置いている。これを両発電所に4年にわたって提供するため、所有者であるパブリック・サービス・エンタープライズ・グループ(PSEG)と契約を締結したもの。これらの発電所で6か月間の試験プログラムを実施した結果、現行の保守点検活動の40%は定期的に行う必要が無いことが判明しており、今回の受注に至ったとしている。

 ロールス・ロイス社の説明によると、「T-104サービス」では世界中で稼働する原子力発電所の運転データを活用する。このような情報を価値の高い洞察力に変換し、PSEGが発電所の稼働率や信頼性を最大限に拡大できるよう支援。具体的には、必要とされる部品や適切な機器を、適切なタイミングで発電所に装備することを可能にするとしており、同社としては社員をPSEGに派遣する方針である。緊密な連携の下で、予防措置的メンテナンスの全体的な作業量や、物的消費量を削減。機器類の信頼性も改善することで、PSEG社が支払う全体的経費の削減につなげることになる。
 同社のP.トゥビン副社長は、「ビッグ・データの分析は当社が最も得意とする分野だ」と述べ、同社がグローバル市場を牽引する航空宇宙産業で、そうした能力を培ってきたと指摘した。今回のサービスは、同じノウハウを原子力産業に適用したもので、同社が保有する世界の発電所運転データや専門的知見を組み合わせれば、価値の高いソリューションをもたらすことが出来るとしている。

 高級車メーカーとして知られるロールス・ロイス社は、2008年に民生用原子力分野に本格的に参入。安全性関係のデジタル計測制御(I&C)系を中国の複数の原子力発電所に納入したり、フィンランドの新規建設計画用に初期段階の構造設計を受注した実績がある。英国内では小型モジュール炉(SMR)開発の企業連合を率いており、ヨルダンで同社製SMRを建設するための技術的実行可能性調査(FS)の実施に向け、2017年11月に同国の原子力委員会と了解覚書を締結した。
 なお、同社は1月17日、事業を簡素化して5つの事業ユニットを3つに集約するという組織改革計画を公表。2016年度実績で2億ポンド(約308億円)の収益を上げた民生用原子力事業は、「パワー・システム事業」に統合する考えを明らかにした。