昨年秋の欧州各地でのルテニウム検出について調査開始

2018年2月16日

©IBRAE

 昨年秋、人工放射性核種であるルテニウム106(Ru-106)が欧州広域の大気中から検出された案件について、独立した立場の専門家で構成される国際科学委員会は2月1日、発生地点の特定には至っていないものの医学利用分野によるものが原因ではないこと、および住民への健康影響はないなどとする暫定結果を公表した。
 同委はこの件に関する詳細調査を行うため、ロシア科学アカデミー原子力安全研究所(IBRAE)のイニシアチブに基づき、昨年12月に設置されていた。1月31日にモスクワのIBRAEで開催された第1回会合(=写真)の結論を明らかにしたもので、今後はデータをさらに収集・検証し、統一データベースを構築する必要があると指摘。4月に再びモスクワで、第2回会合を開催予定であるとしている。

 欧州東部や南東部の国々でRu-106が検出されたのは2017年9月下旬~10月初旬のことで、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)は10月4日、欧州域内の放射能汚染モニタリング・ネットワークからの情報として、オーストリア、ノルウェー、スイスで少量・極低レベルのRu-106が検出されたと発表。仏国内2地点の計測結果も同様だったが、いずれにおいても環境や住民に対する影響はないとの認識を表明した。 
 また、11月21日になると、ロシアの水文気象環境監視局(ROSHYDROMET)が9月~10月にロシア国内で実施したRu-106の計測結果を公表。マヤク再処理施設などが立地するウラル地方南部のチェリャビンスク州が発生地点である可能性を示唆していた。

 IBRAEの国際科学委員会は、原子力安全や緊急時対応関係の科学者や専門家で構成されており、フランス、ロシア、フィンランド、スウェーデン、ドイツ、ノルウェー、英国から参加。第1回会合では、これまでに各国で得られた情報や調査結果について議論した結果、以下のような結論を導き出した。

(1)欧州各国とロシアにおける計測結果に基づき、9月末~10月初旬に大気中に含まれていたRu-106の総量は最大で100TBqと見積もった。

(2)入手可能なデータで見る限り、住民の健康に影響がおよぶ可能性はない。

(3)現時点では不確定要素が多すぎるため、発生地点について結論を出すことは出来ないが、各国で実施したモデリング計算の結果は一致している。

(4)いくつかの国ではルテニウム103が検出されており、106と103の比率は使用済燃料のものと同じである。

(5)当委としては、統一データベースの構築とデータの評価を行うため、入手可能なデータすべてを収集・検証する必要がある。また、ROSHYDROMETには、現地の気象条件データと降水量に関する追加データの提出を要請する必要がある。

(6)Ru-106が検出されたチェリャビンスク州の複数地点において、上昇風が吹いた方向を追加で計測する必要がある。また、最も高い値が検出されたというルーマニアの計測結果が得られれば、さらに有益と考える。

(7)医療用Ru-106が起源であるとの仮説は除外できる。

(8)ROSHYDROMETによると、チェリャビンスク州では9月末頃に下降気流独特の大気現象が観測されており、こうしたデータをさらに考慮すべきである。

(9)当委としては、2017年8月から11月にかけて、ロシア連邦環境・技術・原子力監督庁(ROSTECHNADZOR)がマヤク施設、および隣接するウリヤノフスク州の国立原子炉科学研究所(NIIAR)で査察を実施し、通常の技術プロセスからの逸脱は見られなかったとしている点に注目している。

(10)当委としては調査状況に関する透明性に配慮し、調査結果と結論を公開することで合意している。