米NJ州議会、原子力発電所支援法案を両院の本会議審議へ

2018年2月26日

 米ニュージャージー(NJ)州議会では前会期に審議した原子力発電所支援法案が未決となっていたが、今年1月から2月初頭にかけて上下両院で改めて提出された同法案が2月22日に双方の担当委員会を通過し、ともに本会議の審議に掛けられる見通しとなった。
 同法案(上院877号と下院2850号)は主に、州内で早期閉鎖のリスクに直面する原子力発電所の支援を目的としており、電源の多様化とCO2の排出量削減に貢献する発電所に対しては、発電量に応じて追加の料金が支払われるという「原子力多様性認証(NDC)」プログラムを盛り込んでいる。上院の予算・歳出委員会と下院の電気通信・公共事業委員会が22日に開催した合同ヒアリングでは、米原子力エネルギー協会(NEI)のJ.コテック公共政策担当副理事長が出席し、原子力発電所を維持することでもたらされる様々な恩恵について詳細に説明。そうした恩恵に適切な補償を与えていくには、同法案の成立に向けた迅速なアクションが必要だと要請した。両委員会を通過した同法案のうち、上院法案については今週早々にも本会議審議が始まるとしている。

 コテック副理事長によると、原子力発電所の維持で得られる恩恵は、NDCプログラムの実施に要する年間2億8,000万ドルのコストを大幅に上回っており、経済面、環境面、電気料金面の恩恵はそれぞれ、年間8億2,000万ドル、5億3,000万ドル、4億ドルにのぼる。早期閉鎖するよりも安くつくことは明白だとしたほか、雇用面についても、州内のセーレム原子力発電所(117万kWのPWR×2基)とホープクリーク原子力発電所(129.6万kWのBWR)で1,400人が雇用されている事実に言及。彼らは年間8億ドル以上の経済的価値を生み出しているため、間接雇用も含めて合計5,800人~6,100人の雇用を支えていることになるとした。

 その上で副理事長は、「仮にこれらの原子力発電所を閉鎖した場合、緊急かつ不可逆的な影響がおよぶ」と訴えている。具体的には代替電力の多くを州外の発電設備から購入しなければならなくなり、電力供給の対外依存が高まるとともに雇用も周辺州に流出する。代替設備からの発電電力は、価格の高さゆえにこれまであまり利用されてこなかったものが多く、これが年間4億ドルもの電気料金上昇につながるとの分析結果を提示。カリフォルニア州ではサンオノフレ原子力発電所(112.7万kWのPWR×2基)が閉鎖された後、顧客が3億5,000万ドル以上の電気代を追加で支払ったが、同様の例は他の州でも見受けられると付け加えた。
 同副理事長はまた、NJ州の原子力発電所がもたらしているCO2排出抑制面の恩恵を指摘した。同州における無炭素電力の95%を原子力発電所が発電しており、酸性雨やスモッグ、喘息の原因になるSOxやNOxも排出していない点を強調。同法案の支持者であるC.ブッカー上院議員の発言を引用し、「原子力発電所が州内で喘息患者を削減する一助になるにも関わらず、問題はそうした原子力発電所の真の価値が認められていないことだ」との認識を提示した。