米NJ州で原子力支援プログラム盛り込んだ法案 成立

2018年4月16日

 米ニュージャージー(NJ)州の州議会で4月12日、州内の原子力発電所に対する財政支援プログラムである「ゼロ排出クレジット(ZEC)」を盛り込んだ法案(S2313号とA3724号)が可決成立した。
 2050年までに州内の電力需要の100%をクリーン・エネルギーで賄うという目標の達成に向けて、CO2を排出しない原子力は、多様な電源構成における重要要素との判断によるもの。これによりNJ州は、ニューヨーク州、イリノイ州およびコネチカット州に次いで、州内の原子力発電所温存を目的とする措置が取られた州になった。法案の正式発効には州知事の署名が必要で、米原子力エネルギー協会(NEI)は同日、P.マーフィNJ州知事に速やかな署名を促したほか、同様の政策を検討しているオハイオ州、ペンシルベニア州に対しても、迅速に行動を起こすことを呼びかけている。
 
 NJ州議会は昨年末以降、早期閉鎖のリスクに直面している原子力発電所に対し、発電量に応じて追加料金を支払う「原子力多様性認証(NDC)」プログラムを盛り込んだ法案を審議していたが、今回成立した法案は3月下旬に改めて上下両院で提出されたもの。原子力発電所の支援方法として、「ZECプログラムを設置する」と明確に謳っており、同じ内容の下院法案(A3724号)は12日付けで可決された後、上院法案に一本化されていた。
 ZECプログラムでは、NDCと同じく州の公益事業委員会(BPU)がZECを各原子力発電所に対して発行する。州内の公益電気事業者は、ZECの総数に配電電力の割合を乗じて原子力発電所に前年分の支払いを実施。このコストを全面的に回収するため、BPUは1kWhあたり0.004ドルという追加料金を、公益電気事業者の顧客に対して必ず課すというメカニズムになっている。

 NJ州では現在、セーレム原子力発電所1、2号機(各117万kWのPWR)とホープクリーク1号機(129.6万kWのBWR)、およびオイスタークリーク原子力発電所(64.1万kWのBWR)の4基が、州内の総電力需要量の約4割を賄っている。このうちオイスタークリーク発電所は、取水認可の更新条件が折り合わず、2019年に早期閉鎖することが2010年時点で決定済み(※事業者は今年2月、閉鎖時期を2018年10月に前倒しする方針を表明)。残り3基がZECプログラムに参加すると見られているが、参加に際してはいくつかの条件をクリアして「適格」と認定される必要がある。また、25万ドル以下の登録料支払いも義務付けられることになる。
 
 NEIのM.コースニック理事長は同日付けの声明で、今回の法案成立はNJ州民と同州内で原子力産業に携わる数千人にとって、素晴らしい瞬間になったと指摘。セーレムとホープクリークの両原子力発電所、および関連事業も含めて5,800人分の雇用が維持されるなど、NJ州全体で年間8億ドル相当の経済活動が同法によって温存されると述べた。同理事長によると、州内の原子力発電所は重要な経済的原動力であり、これらの発電量が同州における無炭素発電量の97%を占めていると強調した。
 ZECプログラムはまた、再生可能エネルギー支援のために他州で採用されているプログラムを手本にしており、その他の無炭素電源と同様の支援、対等の条件が原子力にも与えられる。これにより、原子力の貢献に対して適切な補償を行っていない卸電力市場の是正にもつながるとの認識を示した。