米FES社、早期閉鎖予定の原子炉で引き続き政策的救済を模索

2018年5月8日

 財政事情の悪化により、米国の2州で3サイト・4基の商業炉の早期閉鎖を計画しているファーストエナジー・ソリューションズ(FES)社は4月30日、不可逆的な閉鎖決定を下してしまう前に、これを回避するための政策的解決手段を引き続き、議会関係者や規制当局に求めていく方針を明らかにした。
 これは、両州を管轄する北米最大の地域送電機関(RTO)のPJMが同日、「これら4基が閉鎖されても送電網の信頼性に悪影響は及ばない」との調査結果を公表したことに対するもの。CO2を排出せず電源の多様化にも寄与するという原子力の価値が無視されたとして、同社は失望感を表明するとともに、これら4基の閉鎖に対処するためPJMが投資する送電網の改修コストは、顧客の電気料金に転嫁されることになると警告している。

 FES社の顧客エリアでは、PJMが競争原理を導入した卸電力市場と電力システムを運営しており、廉価なガス火力による電力価格の低下や電力需要の伸び悩みにより原子力発電所の採算性が悪化。FES社は3月28日、オハイオ州のデービスベッセ原子力発電所とペリー原子力発電所をそれぞれ、2020年5月末と2021年5月末に早期閉鎖するほか、ペンシルベニア州のビーバーバレー原子力発電所1号機を2021年5月末、同2号機を2021年10月末に早期閉鎖する計画を発表した。
 翌29日には、連邦動力法(FPA)の202c条に基づき緊急命令を発令するようエネルギー省(DOE)長官に要請。具体的には、PJM管内の原子力発電所と石炭火力発電所が一般住民に提供している恩恵に補償を与え、その容量を長期的に保証するための交渉開始をPJMに指示することをDOEに求めた。しかしその2日後の31日、FES社および、同社と同じくファーストエナジー社の子会社である2社は、連邦倒産法の再建型処理手続である第11章の適用を申請するに至っている。

 PJMは今回、送電網の信頼性調査の結果として、FES社の原子炉が閉鎖されたとしても、電力の安定供給に重要な燃料セキュリティは維持されると結論付けた。ただし、送電網が一時的な機能停止から回復する力(レジリエンス)を長期的に確保していくには、電源構成の変化や燃料の安定供給という課題に長期的に取り組む必要があるとも指摘。昨年公表した報告書でも、LNGや再生可能エネルギーを追加することで送電網の信頼性が保たれるとする一方、1種類の電源に過度に依存することは、現行の信頼性基準を超えるリスクがレジリエンスに影響を及ぼす可能性があると述べていた。このためPJMは新たなステップとして、将来的にこの問題に直面する可能性のある管轄エリアを特定する基準の設定と、燃料セキュリティの脆弱性分析を3段階のプロセスで直ちに開始する方針を表明している。

 これに対してFES社は、原子炉4基の早期閉鎖にともない変圧器や送電網に過度に負荷がかかることを避けるため、複数の是正措置を組み合わせて取る必要があるとの新事実についても、PJMが漏らしていたと強調。また、閉鎖予定の4基がオハイオ州における総発電設備容量の14%、ペンシルベニア州では7%を占めるという事実に触れ、不足分は化石燃料発電で全面的に埋め合わせねばならなくなると述べた。
 このため同社は、送電網の信頼性やレジリエンス、燃料の多様化といった重要な役割を原子力発電所が今後も果たせるよう、政策立案者に改めて要請する方針を示している。原子炉の救済措置を取るのに必要なコストを計算するのであれば、考えられるすべてのファクターについて損得を計算してほしいと言明。すなわち、両州が必要としている無炭素電源の価値、地元の雇用や経済に対する貢献、原子炉の閉鎖によりPJMが顧客に負担させることになる送電網の改修コスト――などである。
 FES社としては4基の原子炉それぞれについて、新しい燃料を装荷するか閉鎖するかの最終判断を2019年半ば以降に下していく予定。政策的な救済措置が取られなければ、これらは永久に失われることになると訴えている。