UAE初のバラカ1号機、燃料装荷を延期

2018年5月30日

右端が1号機©ENEC

 アラブ首長国連邦(UAE)初の原子力発電設備となるバラカ発電所(=写真)について、運転管理会社のNAWAHエナジー社は5月26日、2018年中の運転開始を予定していた初号機(韓国製140万kW級PWR)の燃料装荷日程を2019年末か2020年初頭頃に延期すると発表した。
 運転員の訓練活動と規制当局からの承認取得に、もう少し時間が必要との判断に基づくと同社は説明。保守的な意思決定が要求される健全な安全文化の原則に従い、同炉の運転準備状況を包括的に審査した結果、運転開始に至る日程を改定したもので、アラブ諸国においても初となる民生用原子炉の準備作業は次の段階に移行したと強調している。

 アブダビ首長国の西部に位置する同発電所では、工事を受注した韓国電力公社(KEPCO)の企業連合が2012年7月に1号機を本格着工。その後は、約1年間隔で同型の2~4号機を順次着工しており、発電所オーナーである首長国原子力会社(ENEC)は2016年、NAWAH社および同建設プロジェクトの資金調達・管理会社となる「バラカ・ワン社」をKEPCOとの合弁事業体として設立した。今年3月には、韓国の文在寅大統領を招いて1号機の竣工式が現地で開催され、NAWAH社は現在、ENECが2015年3月に申請した運転許可が連邦原子力規制庁(FANR)から下りるのを待っている。

 運転準備状況の審査は、最も厳しいレベルの安全・セキュリティ確保を念頭に置いた保守的アプローチを反映したもので、実施に際しNAWAH社は、ENECや国際的な原子力専門家にも同社の専門家チームに加わるよう要請。これにより、UAEにおける将来的な原子力発電所運営の基盤が着実に築かれるとした。
 同社のM.レッデマンCEOも、こうしたアプローチは同社が実施する全作業の主要な原動力であると強調。バラカ1号機はUAEにとってパイオニア原子炉であり、同発電所の残りの3基のみならず、アラブ諸国で建設される後続の原子力発電所プロジェクトに対してもベンチマークとなる。すなわち、1号機が高いレベルの安全性を達成することにより、2~4号機を運転する際の盤石な先例が形成されることになると述べた。

 このような認識を背景に、ENECは昨年5月の段階でも、1号機の起動日程を2017年から2018年に延期すると発表。安全基準の遵守面で国際的な評価を受けたり、運転員の習熟度を高めるために十分な時間を確保する考えを表明した。昨年10月には、国際原子力機関(IAEA)の運転開始前・安全評価調査団を招聘しており、多国籍の専門家による同調査団からは「所内従業員の技能・訓練を整備・強化する国家技能局が設置されている」などの点を高く評価されていた。