米原子力協会、トランプ政権の原子力発電所救済指示を歓迎

2018年6月8日

 米原子力エネルギー協会(NEI)は6月7日、国内送電網のレジリエンス(一時的な機能停止から回復する力)と国家安全保障の維持で原子力が果たしている役割をトランプ政権が依然として認めており、発電所の早期閉鎖を食い止める措置を指示したとして、これを歓迎するコメントを公表した。
 これはホワイトハウスが今月1日、「発電所内で燃料備蓄が可能な電源が早期に失われるのを防止するため、早急に措置を講じる準備を整えるようエネルギー省(DOE)のR.ペリー長官に命じた」と発表したことを受けたもの。この中で具体的な電源は特定されていないが、同日に、DOEがホワイトハウスの国家安全保障会議用に作成したメモがリークされ、原子力や石炭火力など発電所内で燃料を備蓄できる電源に対する支援措置案が記されていた。このメモはドラフトの段階であり、DOEが法的権限に基づいてこれらの電源の早期閉鎖を一時的に遅らせる案は何も決定していない。しかしNEIは、原子力産業界がこの動きに非常に勇気づけられたとして、同政権を称賛している。

 ホワイトハウスの発表文によると、今回の指示は「国内の送電網やエネルギー・インフラを盤石な状態に保つことは、国の安全保障と国民の安全、および経済を意図的な攻撃や自然災害から防護することにつながる」というトランプ大統領の認識に基づいている。その上で、燃料備蓄が可能な発電施設の差し迫った閉鎖は、米国のエネルギー・ミックスにおける重要部分の急速な減少につながり、送電網のレジリエンスにも影響を及ぼすと指摘。ペリー長官から、それらの電源の喪失防止に向けた提案が示されることを期待するとしていた。

 NEIのM.コースニック理事長はこの指示について、国内の原子力発電所を国家安全保障上の資産として認識させるとともに、運転継続を可能にする方策が検討されつつある証左だと指摘。これまで原子力産業界は、送電網の信頼性とレジリエンスの維持で代わるもののない機能を果たしている原子力設備について、早期閉鎖の流れを断ち切るよう再三にわたって警告してきた。原子力発電所が一旦、閉鎖されてしまえば、廃止措置が始まるため運転の再開は不可能になるが、これらが有する燃料備蓄性は、国家安全保障にとって重要な要素であると強調した。
  同理事長はまた、昨年9月にペリー長官が、様々な自然災害等で燃料供給が途絶した場合でも発電可能なベースロード電源として、原子力と石炭火力を特定した事実に言及。送電網のレジリエンス維持に資するこれらの発電所が早期閉鎖に追い込まれないよう、経費の全面的回収を許可するなどの規則制定を連邦エネルギー規制委員会(FERC)に指示していたことから、今回のホワイトハウスの動きは、この方向性に沿ったトランプ政権の取り組みを反映していると述べた。
 その後、FERCは今年1月にペリー長官が提案した規則の制定手続を打ち切ったが、その代わり、基幹電力系統のレジリエンスを保全する上で、FERCや市場が追加のアクションを取る必要があるかについて、地域送電機関(RTO)や独立系統運用者(ISO)に情報提供を要請。追加アクションに関する評価作業は、現在も継続されている。

 一方、リークされた40頁のメモの中でDOEは、国内送電網が直面しているエネルギー供給保証上のリスクと、送電網の機能停止が国家安全保障と産業基盤にどう影響するかについて説明。その中でも特に懸念されることは、送電網と国有ガス・パイプライン設備間の相互接続が進んでいる点と、軍事施設の99%が商業用送電網に依存している点だとした。また、国家安全保障における民生用原子力産業の重要性、および燃料備蓄性の高い電源の多様性を維持する必要性についても、集中的に取り上げている。
 こうした課題に対してDOEが取り得る方策として、同メモではDOEが連邦電力法および国防産業法に規定された緊急事態権限を行使する案を提示。2段階方式で燃料備蓄型発電所の早期閉鎖を遅らせるとしており、一時的な手段として、閉鎖リスクに陥った発電所から発電容量と電力を24か月にわたり購入することをRTOとISOに義務付ける。その間にDOEは、送電網のレジリエンス維持で必要なものを包括的に分析し、具体的なアクションを速やかに取るとしている。