カナダ原研、SMR実証炉開発プロジェクトで4社から提案受領

2018年6月14日

 カナダ国立の主要な原子力科学技術機関である原子力研究所(CNL)は6月12日、CNLが管理するサイト内で小型モジュール炉(SMR)の実証炉を建設・運転するというプロジェクトに、国内外のSMR開発業者4社から提案があったと発表した。
 これらの提案は、今年4月にCNLが公表した第1回目の募集に対して行われたもので、CNLは今後、4段階で構成される審査プロセスの第1段階として、「認定前段階」を開始する。提案されたSMR設計の技術上および事業上のメリットのみならず、プロジェクトとしての財政的実行可能性、国家安全保障や健全性に関する要件についても評価を行うとしている。

 CNLによると、カナダでは主に遠隔地域や工業地帯でSMRの生み出すクリーン・エネルギーに需要があり、モジュール方式で購入・建設できる点やシンプルな発電所構造により初期投資を削減できる点、従業員が少数で済むなどの点で、従来の原子力技術よりもメリットがあるとした。2017年4月に公表した今後10年間の「長期戦略」では、オンタリオ州チョークリバーも含め、CNLの管理サイトにおけるSMR建設を7つの戦略的イニシアチブの1つに指定。2026年までに少なくとも1基のSMRを建設するため、CNLは現段階でSMRの商業的な実行可能性を実証しようとしている。
 CNLはまた、SMRのプロトタイプ試験や技術開発支援で世界的な拠点となることを目指しており、将来的には世界のSMR市場でリーダー的立場を得ることを目標に設定。そのために、今年2月にはSMR開発の戦略ロードマップ作りに着手している。

 今回提案のあった4社について、CNLは社名などの詳細を公表していないが、募集は今後も予定しているため、SMR開発業者からの提案はいつでも歓迎すると強調。2026年以降についても、複数のSMRを建設する可能性があると述べたことが、地元メディアで伝えられている。
 今のところCNLは、チョークリバー・サイトとマニトバ州のホワイトシェル・サイトについて、SMR実証炉の建設に適した場所を特定する総合サイト調査を実施中である。また、地元コミュニティやステークホルダーとの交流を一層深めることにより、受け入れ住民の意見を収集し、実証炉プロジェクトに反映させる予定。具体的には、同プロジェクトの説明会やオンライン・セミナー、意見交換会等の開催を計画していることを明らかにした。

 同プロジェクトの審査プロセスでは、SMR設計を提案した開発業者が予備的基準の適合状況について、任意で評価を受ける第1段階の審査に続き、第2段階の「適正評価段階」で一層厳格な財務要件審査が行われる。ここではプロジェクトの経費と資金調達について、CNLが全面的に評価。続く第3段階は「土地の手配とその他の契約に関する交渉段階」となっており、CNLの親会社としてサイトを所有しているカナダ原子力公社(AECL)が、開発業者とサイト譲渡契約を交わす。最終的に「プロジェクトの実施段階」に進展し、SMR実証炉の許認可と建設、試験、起動、運転、廃止措置が実行に移されることになる。