フィンランドの最終処分場計画、実規模の処分試験実施へ

2018年6月25日

処分トンネル内に掘削する処分孔の想像図©ポシバ社

 世界初の使用済燃料用・深地層最終処分場をフィンランドで建設中のポシバ社は6月19日、この夏中に実規模の最終処分試験を地下岩盤特性調査施設のONKALOで実施すると発表した。
 これは、処分トンネル内に使用済燃料を封入したキャニスターを定置するための本格的な原位置試験(FISST)で、岩盤中の処分孔に実際にキャニスターを入れるほか、緩衝材や処分トンネルの封印プラグも使用して、最終処分技術の機能を実証するのが目的。FISSTが完了した後は、処分用機器や装置の作動を確認する「統合システム試験」を2022年に実施し、2020年代中に処分場の操業開始を目指すとしている。

 国内の原子力発電事業者2社が共同出資するポシバ社は2000年、ユーラヨキ地方にあるオルキルオト原子力発電所の近郊エリアを使用済燃料の最終処分場建設サイトに選定した。同地点の地下約500mの部分に最大約5,500トンの使用済燃料を最終処分するという同社の計画を、フィンランド議会は2001年5月に承認。これを受けて、ポシバ社は2012年に同処分場の建設許可を申請しており、2015年11月に許可の取得に成功した。建設工事は翌2016年11月に始まったが、完成した処分場の操業を開始するには、同社はさらに運転許可を申請・取得する必要がある。

 サイトの地上部に建設される使用済燃料の封入プラントとは別に、最終処分場は主に3種類の地下設備で構成される予定。それらは(1)地下400~450mの深さに掘削する処分トンネル137本、(2)処分トンネルとアクセス坑道、および換気用と人の移動用のシャフトを連結する主要坑道、(3)地下に設置する技術的補助施設――である。処分トンネルの床部には深さ6~8mの処分孔を掘削し、キャニスターを緩衝材とともに収めるという設計になる。
 ポシバ社は昨年12月からFISSTの実施準備を始めており、試験内容は今月中旬にメディアを通じて国民に大々的に紹介された。FISSTではまず実証試験用の処分トンネル内に処分孔を2つ掘り、使用済燃料の残留熱を模した発熱体を銅製キャニスターに封入して定置。ベントナイトの緩衝材で埋め戻した上で、処分トンネルの入り口を鉄筋コンクリート製の大型プラグで封印する。これにより同社は、プロトタイプ段階にある使用済燃料処分技術の機能を実際の処分と同じ規模で確認。温度の変化や圧力、トンネル内におけるキャニスターと処分孔の挙動に関する研究用データを、約500ものセンサーを使って把握することになる。

 FISSTの実施地点であるONKALOは、処分用岩盤の地質や水文学的特性について詳細な調査を行うため、処分場建設サイトの地下450m地点に作られた研究調査施設。最終的に同処分場の基本的な一部分となる予定だが、処分場の建設許可申請に必要なデータを収集するために使われたほか、実際の環境条件下で最終処分技術と掘削技術を開発する目的でも活用されている。
 FISST後に予定されている「統合システム試験」もONKALOで行われることになっており、ポシバ社は2017年4月から同試験の準備作業として、試験用処分孔の掘削などを開始。実際よりも短い長さ60mの主要坑道と80mの処分トンネルを1本ずつ掘削するほか、4つの処分孔をトンネル内に掘る計画で、FISSTと同様に使用済燃料を使わずに、最終処分プロセスにおける様々な段階の機能について、より多くの情報を収集する計画だとしている。