中国で世界初の欧州加圧水型炉(EPR)とAP1000が送電開始

2018年7月2日

©CGN

 世界でも最新鋭の第3世代原子炉設計である仏フラマトム社製・欧州加圧水型炉(EPR)と米ウェスチングハウス(WH)社製・AP1000の初号機が、6月末にいずれも中国で初めて送電網に接続された。
 中国広核集団有限公司(CGN)が6月29日、フランス電力(EDF)との協力により、広東省の台山原子力発電所(=写真)で建設中だった1号機(175万kWのPWR)について、同日の午後6時頃に初併入した事実を公表。一方、AP1000など第3世代技術の導入・習得・国産化を担当する中国国家核電技術公司(SNPTC)は6月30日、浙江省の三門原子力発電所1号機(125万kWのPWR)を同日の午後5時頃、送電網に接続したことを明らかにした。
 これらの設計を採用した原子力発電所は、両メーカーの本拠地である仏国と米国でも建設中となっているが、台山のEPRは先に欧州で着工した2基のEPRを追い越して完成したもの。三門1号機とともに、今年中に営業運転を開始すると見られている。

 台山原子力発電所の1、2号機は、2009年と2010年にそれぞれ本格着工した。中仏最大のエネルギー協力プロジェクトとなった同発電所建設計画は、台山原子力発電合弁会社(TNPJVC)が担当しており、CGNと広東省の電力会社が合計70%出資、EDFが残り30%を出資している。今年の4月10日に環境保護部(省)が1号機の燃料装荷許可を発給したのを受け、CGNは同日から燃料の装荷作業を開始した。6月6日には臨界条件を初めて達成しており、初併入後は段階的に出力上昇試験を実施する計画。最終的に、定格出力で安定的に発電出来ることを確認するとしている。
 CGNによると、台山1号機が世界初のEPRとして送電開始できた理由としては、原子力発電所の建設・運転でCGNとEDFがそれぞれ積み重ねてきた経験や、両者間の長年にわたる戦略的パートナーシップ、両国の原子力部門の主要企業から得られた支援など、複数のファクターが考えられる。また、台山プロジェクトの初期段階においては、2005年に世界初のEPRとして着工したフィンランドのオルキルオト3号機(OL3)、および2007年に仏国で着工したフラマンビル3号機(FL3)の建設作業経験からも、恩恵が得られたとしている。

 現在、OL3の建設工事では、2019年9月に通常運転を開始出来る見通し。FL3では、今年の第4四半期末に燃料の初装荷と起動が予定されている。フラマトム社のB.フォンタナ会長兼CEOは台山1号機の送電開始について、同社のみならず原子力産業界全体にとって歴史的瞬間になったと評価。その上で、後続EPRとなる台山2号機やOL3、FL3、および英国のヒンクリーポイントC原子力発電所建設計画にも、台山1号機の広範な経験が活かされることになると述べた。

 一方、三門原子力発電所の建設工事は、2006年に共産党中央委員会と国務院がAP1000の導入判断を下したのを受け、同技術の国産化戦略として2009年4月と12月に1、2号機がそれぞれ着工した。2017年3月にWH社が米国の連邦倒産法に基づく破産申請を行った後、米国内のAP1000建設プロジェクトのうち、A.W.ボーグル3、4号機増設計画はプロジェクトの続行が決まったものの、V.C.サマー2、3号機増設計画のオーナー企業は、両炉とも完成を断念した。中国でも、SNPTCと親会社の国家電力投資集団公司(SPIC)が破産申請日に直ちに対応協議を実施。WH社の協力継続意思を確認した上で、三門発電所の2基、および同じくAP1000を採用して建設中の海陽1、2号機を完成させることで合意に達した。
 SNPTCによると、中国では原子力関係企業等の努力により、すでにAP1000技術の導入・習得・国産化を完了。中国版のAP1000である「CAP1000」、および中国が知的財産権を保有する出力拡大版の「CAP1400」を建設する際、WH社の倒産申請の影響が及ぶことはないとの認識を示している。
 三門1号機の燃料初装荷は今年4月に行われており、6月27日に初めて、原子力蒸気でタービンを回すことに成功した。今後は、出力上昇試験を含む様々な試験を実施し、営業運転の開始を目指すとしている。