仏フラマトム社、製造記録上の不正は機器の有用性に問題なしと結論

2018年7月19日

 仏国の原子炉機器メーカーであるフラマトム社(旧アレバ社)は7月18日、傘下のクルーゾー・フォルジュ社による原子力用鍛造品の製造記録を分析した結果、現段階では、仏国内の既存の原子力発電所に納入・設置された機器の有用性に問題が無いことを確認したと発表した。
 クルーゾー社の製造記録1,925件について、発覚した不正が各種要件からの逸脱に当たるか、またその特徴を検証する作業をフラマトム社の特別チームが完了したもの。フラマトム社の親会社であり、国内の商業炉全58基を所有するフランス電力(EDF)は、今年の9月までにこの件に関する全基分の概要報告書を原子力安全規制当局(ASN)に提出すると見られている。ASNはそれらの審査を行った上で、燃料交換のために計画停止した原子炉の再稼働が可能か判断するが、これまでに31基について再稼働を承認済みとなっている。

 2015年4月にアレバ社(当時)は、国内で建設中のフラマンビル原子力発電所3号機で原子炉容器上蓋と下鏡に鋼材組成の異常が見つかったとASNに報告した。これらを製造したクルーゾー社を調査したところ、1965年以降に製造された原子力部品約400点の品質証明書で製造記録の不正が認められるなど、大掛かりな組織的、技術的欠陥が生じていたことが判明。EDFは2016年9月、詳細試験の結果等から、クルーゾー社製の耐圧機器を装備した原子炉の安全性に影響は及ばないとの分析結果をASNに報告した。
 しかしASNは2017年、製造記録で認められた不正が、製造技術上の要件や規制上の要件、発電所内部の要件などからの逸脱に当たるかについて、2018年12月末までに調査するようEDFに指示。EDFは昨年夏からこの調査を開始しているが、燃料交換のための計画停止に入った原子炉が再稼働する2か月前までに、製造記録の調査結果をASNに提出するよう義務付けられている。

 その一方で、ASNは今年1月、監督活動を強化するなど一定の条件下であれば、クルーゾー社が国内原子力施設向けの操業を再開することを許可するとフラマトム社、およびEDFに通達。クルーゾー社の操業再開に関しては、フラマトム社も2016年初頭から、安全文化や技術的能力、製品品質、組織など、各側面の改善計画をクルーゾー社内で開始していた。
 今回の発表の中でフラマトム社は、この改善計画が完了したため機器製造能力が増強され、国内原子力発電所の取替用機器のみならず、世界中の新設計画用に主要な原子力鍛造品を提供可能になったと強調。安全性と品質の確保を最優先に、作業チームや製造スキルを強化し、製造設備への投資も実施中だとしている。

 フラマトム社としてはクルーゾー社の工場を、原子力産業界のニーズに特化した鍛造サービスを提供する「中核的拠点」とすることに意欲を燃やしており、D.エモン副社長は「品質保証システムの全面的な見直しを終えて、クルーゾー社に対する顧客や安全規制当局の信頼度は向上しつつある」と指摘。クルーゾー社も原子力関係のプロジェクトに最も重点的に取り組んでいるが、これは安全性と品質、および顧客の満足度を高めるため、複数のチームが実施している熱心な活動によるものだと述べた。
 このような「未来工場プロジェクト」に沿って、フラマトム社はクルーゾー社の工場でデジタル設備の設置も進めている。これにより、得られたデータの信頼性を高めるとともに、鍛造作業中の追跡調査を改善することが可能となる。さらに、新たな鍛造技術を開発するため、研究開発プログラムを進めていることも明らかにしている。