東芝、英NuGen社株の売却交渉で韓国電力の優先交渉者指定を解除

2018年8月2日

 韓国の産業通商資源部(MOTIE)は8月1日、東芝が英国のニュージェネレーション(NuGen)社の株式を売却するため、韓国電力公社(KEPCO)と進めていた交渉において、KEPCOは優先交渉者としての指定を解除されたものの、その他の交渉者と同様に協議は継続されると発表した。
 東芝が100%所有するNuGen社は、英国カンブリア地方ムーアサイドで新規の原子力発電所(360万kW分)建設計画を進めているが、英国政府が提案した新しい事業方式をKEPCO側で追加検討する時間が必要になったため、東芝は同社を優先交渉者から外して他企業とも交渉の機会を探ることにしたもの。
 ただし、KEPCO側の事情を考慮した東芝が、依然としてKEPCOとの協議を優先的に続ける立場を取っていること、新しい事業方式を導入した場合の収益性とリスク軽減策に関し、KEPCOが東芝らと共同でフィージビリティ・スタディ(FS)を開始することで合意したことをMOTIEは強調している。

 KEPCOは昨年12月に優先交渉者に選定されて以降、MOTIEとともにムーアサイド原子力発電所計画の収益性やリスクに関する協議を、東芝および英国政府と続けていた。英国では、先行するヒンクリーポイントC原子力発電所(163万kWのPWR×2基)建設計画の電力買い取りについて、固定価格による差金決済取引(CfD)制度の導入を政府が決定。その行使価格により電気料金が高騰しかねないと危惧する声が同国内では根強く、英国政府は今年6月、日立製作所がホライズン・ニュークリア・パワー社を通じて進めているウィルヴァ・ニューウィッド原子力発電所(290万kW分)建設計画に関して、資金調達は民間部門で行うべきとの基本姿勢を強調。その上で、持続可能な資金調達モデルとして「規制資産ベース・モデル(RAB)」の導入を勧告している。
 RABでは、政府の規制機関が規制収入に基づいて企業の資産価値から安定収益率を算定。これにより、返済可能な資金を調達する際のリスクを最小化する。水道や鉄道など英国の様々な分野の公共事業で取り入れられている事業方式であり、英ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)のG.クラーク大臣は、ウィルヴァ計画以降すべての新設計画を低コスト化するため、同モデルを適用した民間主体の資金調達を目指す方針を明らかにした。

 MOTIEによると、KEPCOは英国政府の財政事情に配慮してRABの導入検討を開始したが、その間にNuGen社株の売買交渉が遅延し、同社の運営経費が過度にかさむことから、東芝は7月25日付けでKEPCOに対し、優先交渉者としての指定を解除すると通達。この関連で、KEPCOとMOTIEは同月30日、ロンドンでBEISと共同作業部会を開催し、RABモデルの導入にともなう収益性とリスクの管理計画を集中的に議論した。
 KEPCOはまた、同モデルの共同FSに着手するための会議も東芝およびNuGen社と開催。同FSで良好な結果が得られた場合、同社は韓国政府との緊密な協議を通じて、ムーアサイド計画への参加に向けた社内審議手続や政府からの資金調達を進めるとしている。