米国初のAP1000建設計画、予算の増加で頓挫の危機に

2018年9月26日

 米国では現在、約30年ぶりの新設計画として、ウェスチングハウス(WH)社製のAP1000設計を採用したA.W.ボーグル原子力発電所3、4号機増設計画がジョージア州で進展中だが、総工費の増加を受けてオーナー企業4社の足並みが乱れている。
 サザン社の最大子会社で同プロジェクトに45.7%を出資しているジョージア・パワー社によると、同社を含めプロジェクトの70%を保有する3社が今回、建設の続行を表決したのに対し、残りの30%を出資する地元オーグルソープ電力は9月24日、表決の1日延期と同社が負うべきとされた義務事項を回避できるよう譲歩を要請。その後の動きは公表されておらず、同社が現行の出資比率の下で建設続行に難色を示した場合、プロジェクトがキャンセルになる可能性をジョージア社は示唆している。

 昨年3月にWH社が倒産申請を行った後、V.C.サマー2、3号機増設計画のオーナー企業がAP1000の完成を2基とも断念した一方、ジョージア社とオーグルソープ電力、州営電力(MEAG)、およびダルトン市営電力の4社は同年8月、一致した見解としてボーグル増設計画の続行と両機の完成をジョージア州の公益事業委員会(PSC)に提案。同年12月には、東芝がWH社の親会社としての保証金を一括で早期弁済しており、これを受けてPSCは同プロジェクトの継続を全会一致で承認していた。
 しかし、オーグルソープ電力は今年8月、ジョージア・パワー社およびプロジェクトの全体的な管理をWH社から引き継いだサザン・ニュークリア社から、23億ドルを追加するという新たな予算額を伝えられたと発表。これを受けて今月24日になると、プロジェクトの継続を同社が支持するには、「23億ドルの予算追加や、同プロジェクトで偶発的な事態が発生した場合の基金として別途8億ドルを追加するという現行予算に上限を設ける」など、複数のコスト管理オプションが必要だと強調した。

 オーグルソープ電力の出資比率から計算して、同社の出資額は当初計画の42億ドルから約72億5,000万ドルに拡大した。残すところ約4年の建設工事期間に、同社は傘下の電気共同組合や郊外のエネルギー消費者を守るための策を模索しており、新たに改定された予算額や現行レベルを超える出資についてはサザン社とその株主が責任を負うべきだとの認識を表明。オーグルソープ電力とそのメンバー会社にとって、原子力は60年から80年もの間、クリーンで信頼性の高い電源として利益をもたらすものの、支払に上限を設けずチェックもしないプロジェクトであるならば、その継続は顧客にとって最善の利益にはならないと指摘している。

 【参照情報】ジョージア・パワー社、オーグルソープ電力、MEAGの各発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月25日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」、ほか。