仏国務院、フェッセンハイム発電所を早期閉鎖する2017年の省令を破棄

2018年10月31日

 仏国政府の諮問機関であるとともに行政訴訟に関して最高裁判所の役割を担う国務院は10月25日、フェッセンハイム原子力発電所(90万kWのPWR×2基)を早期閉鎖するために、2017年に当時の環境相が公布した運転認可の無効化省令を破棄するとの判断を下した。
 この省令は、F.オランド前大統領が制定した政策「原子力発電の設備容量を現状レベルの6,320万kWに制限する」を、同政権の統治期間が満了する前に実行するための措置だった。しかし国務院は、省令を官報で公表してしまう前に、事業者であるフランス電力(EDF)が運転認可の無効化を政府に要請すべきだったと裁定。EDFの要請に基づかずに公布された省令は、仏国の法制度に反していると結論づけた。
 一方、仏原子力安全規制当局(ASN)は22日付けの情報メモで、EDFが同発電所の運転認可を更新する意思のないことを確認。今回の裁定で、EDFの閉鎖計画に大きな影響が及ぶことはないとの見方が有力である。

 仏国では8か月にわたった全国的な討論の結果、「緑の成長に向けたエネルギー移行法」が2015年8月に成立した。これにより、オランド前大統領の政策が正式に決定し、EDFは建設中のフラマンビル3号機(163万kWのPWR)(FL3)の完成に合わせて、既存の発電所の中から同程度の容量のものを閉鎖することになった。
 EDFは2017年1月24日と4月6日の理事会で、国内最古のフェッセンハイム発電所を閉鎖する際の条件を承認。この中で、(1)運転認可の無効化承認は、FL3が起動した日にのみ効力を発揮すること、(2)発電所の閉鎖は、原子力設備を現状レベルに制限したエネルギー移行法を遵守する上での必要事項であること、などとした。また、これらの条件に基づき、FL3の起動に先立つ6か月以内に、フェッセンハイム発電所の運転認可の無効化省令を政府に要請するよう、EDFのJ.B.レビィ会長兼CEOに指示していた。
 しかし、当時のS.ロワイヤル環境・エネルギー・海洋大臣はこの2日後の4月8日、EDFからの正式要請を待たずにフェッセンハイム発電所の運転認可無効化に関する省令を公布。その合法性については、地元のフェッセンハイムを含む複数の地方自治体、およびエネルギー関係の2つの労組連合が異議を申し立てていた。
 現時点でFL3は2018年末までに起動することになっているが、国務院は「EDFの会長が未だに運転認可の無効化要請をしていないことは明らかだ」と指摘。今後は、EDFの要請に基づく新たな省令が必要になると見られている。

 (参照資料:国務院、ASNの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)