英国の商用再処理工場「THORP」が予定通り操業終了

2018年11月15日

©英国政府

 英国セラフィールドで商業用の酸化物燃料再処理工場「THORP」(=真)を管理・操業していたセラフィールド社は11月14日、同工場における24年間の操業が2012年の決定通りに終了したと発表した。
 THORPではこれまでに、9か国の30顧客から9,000トン以上の使用済燃料を受け入れた。収益は90億ポンド(約1兆3,300億円)にのぼるとしているが、今後は2070年代まで使用済燃料の貯蔵施設として継続して活用される予定。THORPの再処理操業終了により、世界で稼働する商業用の再処理工場は、仏オラノ社のラ・アーグ再処理工場のみとなった。

 THORPは、日本など再処理を委託する海外顧客が主に拠出した18億ポンド(約2,700億円)の総工費で建設され、1994年から操業を開始。セラフィールド・サイトで最大の原子力施設となり、海外顧客が持ち込む軽水炉からの使用済燃料、国内で稼働する改良型ガス冷却炉からの使用済燃料を再処理した。
 しかし、国際的な再処理市場はその後大きく変化し、顧客の多くが現在は再処理よりも使用済燃料を当面貯蔵する方向で管理している。THORPの所有者である原子力廃止措置機構(NDA)は2012年6月、「契約済みの使用済燃料はTHORPで再処理するのが最も実行可能、かつコスト面でも効果の高い戦略である」との検討結果を公表。その一方で、追加の再処理契約が国内外ともに見込めないこと、THORPの操業継続に莫大な投資が必要になることなどから、契約作業量が完了する2018年末に停止とする判断を下していた。

 THORPでは11月9日、最終分の使用済燃料について再処理を開始。操業を停止した後は、関係業務に就いていたすべての従業員に対し、代替業務が提案されたという。セラフィールド・サイト自体も、今後は原子力施設の浄化に関する専門的知見の中心的存在として再編成されるとしている。

 (参照資料:英国政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの11月14日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)