米エネ省の先進的原子力技術研究開発支援、第3弾に1,800万ドル

2018年11月21日

 米エネルギー省(DOE)は11月13日、先進的な原子力技術の研究開発支援で新たに6州の11プロジェクトを対象に選定し、合計で1,800万ドルを拠出すると発表した。
 小型モジュール炉(SMR)開発などを含むこれらのプロジェクトは民間チームが主導するものの、連邦政府機関や官民の研究所、高等教育機関、その他の国内組織が米国の商業用原子力技術を進歩させる目的で参加。民間の拠出分も含めると、これらの総合的な価値は2,500万ドルにのぼるとしている。

 この原子力支援イニシアチブでDOEは、今年4月に2018会計年度分の初回分として、6,000万ドルを投資する13件の対象プロジェクトを選定。7月には、第2弾となる追加の2,000万ドル分として9件を選定した。今回の選定に際してDOEのR.ペリー長官は、「米国内でクリーン・エネルギーや経済関係の目標を達成する上で、原子力の果たす役割はますます重要になっている」と指摘。対象プロジェクトの選定は、革新的原子力技術の開発や配備を成功させる際、必要となる官民連携の典型的な例になると述べた。

 選定されたプロジェクトのうち1件は、「新型原子炉設計の初号機開発を目的とする大規模な実証準備プロジェクト」という支援条件に分類され、主導企業はホルテック・インターナショナル社の子会社である。同社製SMRとなる「SMR-160」の受動的安全システムを実証するため、独自の設定が可能な試験プラットフォームを開発する計画。同設計のみならず、その他のSMRについても商業化の加速を促すためのもので、経費はDOEと同社でそれぞれ、約160万ドルずつ拠出する。

 2つ目の支援条件である「新型原子炉の設計・技術について商業化の可能性向上を目的とした概念やアイデアの提案」では、4件のプロジェクトが選定された。DOEが500万ドルを拠出し、民間からの拠出も含めた総額が674万ドルと最も大きいのは、エクセロン社が所有する15基のBWRで炉心挙動の理解を深めるため、モデリングと分析を行うというプロジェクトである。このほか、電力研究所(EPRI)の主導により、電子ビームを用いたモジュール式チェンバー内溶接技術を実証するプロジェクトにDOEは約290万ドルを拠出。リスク評価が行われた条件に基づいて、メンテナンス能力を全面的に統合するというパイロット試験のプロジェクトには、約360万ドルを拠出するとした。これは国内原子力発電所のO&M(運転・保守管理)経費の削減を目的としており、アイダホ国立研究所やロールス・ロイス社の北米支部が参加することになっている。

 3つ目の支援条件は「新型原子炉設計の認証や認可取得関係の課題や審査で、直接解決策を必要とするもの」。今回は、テレストリアル・エナジー社の米国支社が実施予定の、「一体型溶融塩炉(IMSR)で申請書を提出する前段階に、米原子力規制委員会(NRC)と交流するための活動」が支援対象に選定された。DOE側の拠出額は約50万ドル、DOE以外からは約12万ドルが拠出されるとしている。

 残りの5件は、「原子力の技術革新を加速するゲートウェイ(GAIN)」プログラムに基づくもので、ウェスチングハウス社やエクセロン社などの5社に対し、技術開発用バウチャー(国立研究所等の施設・サービス利用権)が交付される。これらの合計額は215万ドルとなっている。

 (参照資料:DOEの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)