米ペンシルベニア州で超党派議員が原子力発電所の早期閉鎖阻止を訴え

2018年12月7日

 米ペンシルベニア州で、州内原子力発電所の早期閉鎖を憂慮する超党派の議員グループが11月29日、早期閉鎖による悪影響や原子力産業の州経済と環境等に対する貢献についてとりまとめ、州議会に対して2019年には悪影響を防ぐための行動を起こすよう訴える報告書を公表した。
  同州ではスリーマイルアイランド原子力発電所1号機が2019年に、ビーバーバレー原子力発電所の2基が2021年に早期閉鎖されることになっている。電力卸売価格の長期的な低迷や再生可能エネルギーに対する州政府の優遇措置などが、原因として指摘されている。
 これらが州内の原子力発電設備容量の四分の一を占めることから、同グループの所属議員は「これらの原子力発電設備が失われることは、州の経済や環境を破壊する半永久的な打撃になる」とした上で、州議会の一員として、それを防ぐために何ができるか、何をすべきかを綿密に調査したと明言。同報告書は州議会のメンバー全員と州知事に配布されるとしている。

 「原子力幹部会(NEC)」と呼称される同グループは2017年3月、米国内でも初の試みとしてペンシルベニア州議会内に創設された。原子力発電所が早期閉鎖に至る根本原因を詳細に理解するとともに、これらの閉鎖が州内原子力産業界の抱える大きな課題の兆候であるのか、あるいは例外的なものであるかを確認することが目的。州議会の会期中に複数の研究会を開催し、関連する様々な議題について専門家の意見を聴取した後、NECは州内5サイトの原子力発電所が、同州に数多くの利益をもたらしていることが判明したとしている。
すなわち、これらは州内の総発電量の40%近くを発電するとともに、無炭素エネルギーに至っては93%以上を提供。1万6,000人分の雇用を下支えしているほか、州経済に対して年間20億ドル以上の貢献をしている。また、州内の電気料金を手頃な価格に引き下げる一助になっており、CO2やSO2の排出を抑制して大気質の改善にも貢献している。

 このように、原子力産業がもたらす数多くの重要な恩恵を維持・促進することこそ、NECが創設された理由だと同グループは説明した。米国議会や連邦エネルギー規制委員会(FERC)、PJMのような地域送電機関(RTO)が何の対策も取らないなか、州内で原子力産業が失われて州経済や環境、消費者に破壊的影響が及ぶのを防ぐため、ニューヨーク、イリノイ、コネチカットおよびニュージャージーの各州が原子力発電所に対して直接的な支援策を取った事実にNECは言及。ペンシルベニア州議会にも原子力発電所の早期閉鎖防止で取り掛かれる手立てがあるかを確認するとともに、早期閉鎖にともなう環境や経済、雇用への影響について理解が深まるよう努めたとした。

 報告書によると、連邦政府や地域・州レベルの現状では、ペンシルベニア州内で原子力産業の将来を決定付ける4つのオプションが残されている。すなわち、

(1)何も行動を起こさず、原子力発電所のようなクリーン・エネルギー源の早期閉鎖を放置し、PJMが事実上、同州のエネルギー・ミックスについて指図することを良しとする、

(2)州政府の「代替エネルギー・ポートフォリオ基準(AEPS)」を修正する、あるいは「(CO2の)ゼロ排出クレジット(ZEC)」プログラムを設置して、原子力をその他の無炭素電源と対等の立場に置く、

(3)州政府のAEPSを変更可能な条件で修正する、あるいはZECプログラムを設置し、州政府が推奨・支援する電源について新たな発電設備の建設を独自に同州内で可能にする、

(4)企業や家庭からのCO2の排出量に応じて課金する「価格付けプログラム」を同州内で設置する、――である。

NECで共同議長を務めるB.コルビン下院議員は、「これらのオプションのうち、いくつかのみが州の自治体や経済、環境に不可逆的な損害が及ぶのを防げると思う」と指摘。ワシントンDCの議員や規制当局は、エネルギー市場で長期的に大きくなってきた欠陥に対処出来なかったが、ペンシルベニア州の議員は自分達の消費者や原子力産業界を守りたいのなら、直ちに行動を起こさねばならないと強調している。

 (参照資料:NECの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月4日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)