英国政府、高レベル廃棄物の深地層処分で改めてサイト選定プロセス開始へ

2018年12月21日

 英ビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)は12月19日、高レベル放射性廃棄物(HLW)を長期的に管理するため、新たなサイト選定プロセスにより深地層処分を実施するとの政策を公表した。
 英国では2008年~2009年に、カンブリア州の2自治体が深地層処分場(GDF)の受け入れに関心表明したものの、州政府の反対により建設サイトの選定プロセスは2013年に白紙に戻った。BEISは今年1月から4月にかけて、2014年に当時のエネルギー気候変動省(DECC)が策定した「白書」の原則に基づき、GDFのサイト選定プロセスに関する2つの文書について公開協議を実施している。その結果から、同白書に代わる最終的な政策枠組として今回、「深地層処分の実施--HLWの長期管理で地域社会と協働」を公表。地元地域社会とのパートナーシップに基づく合意ベースのアプローチにより、GDFの建設に最適な地点を探っていくとしている。

 同文書の前書きでBEISのR.ハーリントン産業担当相は、他の多くの原子力発電利用国と同様、英国政府がHLWの処分では深地層処分場が最も安全なオプションと確信している点を指摘。封入した廃棄物を深地層の多数のくぼみやトンネル内に隔離することにより、放射能が地表に到達することを防ぐことができるとした。
 同相はまた今回の文書で、処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM)が最適な建設サイトの特定で地域社会とどのように協働していくかなど、深地層におけるHLW管理で枠組となるものを英国政府が設定したと説明。クリーン・エネルギーによる経済成長や生産性を高めるという原子力部門の主要な役割を定めた政府の産業戦略に対しても、GDFは貢献するとの認識を示した。
 同相はさらに、GDFの開発は数十億ポンド規模のインフラ投資になると予測。技術を必要とする雇用や経済的な恩恵が、100年以上にわたって受け入れ自治体にもたらされるとしている。

 英国政府や関係機関が地元の合意ベースでGDFの建設サイトを特定する際、今回の文書は以下のようなプロセスがサイト選定に盛り込まれるとした。

・初期協議と作業グループの設置:RWMと地元地域との初期協議は、GDFの受け入れに関心を持つ個人やグループの構成員によって始まる。建設提案がもたらす利点等について双方が合意した後は、関係する主要な地方自治体すべてに共同で連絡し、コミュニティ全体で幅広い議論を開始しなければならない。また、RWMを含む関係者組織で作業グループ(WG)を設置し、GDFの建設に適した地点を含む特定の地理的エリアを選定する。同WGには、関係する主要な地方自治体すべてがメンバーとして招かれねばならない。
・「地域社会パートナーシップ」の創設:同WGは、GDFの立地で影響を受ける可能性のある個人や組織について情報を収集しつつ、コミュニティ内で情報共有したり、地層処分等への疑問点に答える「地域社会パートナーシップ」のメンバーを特定。同パートナーシップでは、地元コミュニティの一員や組織、RWMなどのほか、関係する主な地方自治体のうち少なくとも1つを、構成員として含める。
・「地域社会パートナーシップ」協定の締結:同パートナーシップのメンバーが共同作業をする際の原則や、それぞれの役割、責任事項等について決定を下す際の原則を定めた協定を締結する。
・地元への投資資金調達:英国政府は「地域社会パートナーシップ」を構成する各自治体に対して、年間最大100万ポンド(約1億4,094万円)の資金投資が可能になるよう手配。サイト選定プロセスが深地層のボーリング調査段階まで進んだ自治体には、年間で最大250万ポンド(約3億5,237万円)が支払われる。
・撤退する権利:サイト選定プロセスが「市民の支持に関するテスト」段階に進むまでは、自治体はいつでも同プロセスから撤退することが可能。撤退の判断は関係する主要な地方自治体あるいは、「地域パートナーシップ」を構成する自治体が下すことになる。
・「市民の支持に関するテスト」:GDFの開発について国務大臣が合意の判断を下す前に、地元自治体はGDF受け入れ意思のあることを最終的に証明するため、住民投票その他の方法で同テストを実施しなければならない。実施時期を決める最終決定権は、「地域パートナーシップ」を構成する主要な地方自治体が有することになり、その実施に際してはそれらの自治体すべての合意が必要だとしている。

 (参照資料:BEISの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月20日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)