米規制委、設計外事象による過酷事故の影響緩和で最終規則公表へ

2019年1月31日

 米原子力規制委員会(NRC)の委員5名は1月24日、設計外事象による過酷事故の影響緩和に関する最終規則案を同日の表決で承認し、今年春の連邦官報に公表することをスタッフに指示した。

 同規則は、NRCが福島第一原子力発電所事故後の2012年3月に発令した規制要件に基づき、2016年12月に最終版がNRC委員に提示されていたもの。米国内の多くの商業炉に対して、連邦官報で同規則が公表された後、2年と30日以内に同規則における要件の遵守を求める一方、2013年3月の「格納容器のベント機能改善命令」で対象となったマークI、II型格納容器付きBWRについては、追加でもう一年の猶予を与えている。
 同規則はまた、2012年に発令したベント関係の命令や事故時の影響緩和戦略命令、2012年以降に発給した新規原子炉認可に盛り込んだ条件等から、数多くの内容を幅広く適用。このため、同規則の要件が有効になった時点で、それらの命令や条件を終了とする文言が盛り込まれたとしている。

 同規則の下で求められている要件は、まず(1)発電所で通常運転用および緊急時用のA/C電源すべてが使用不能になった場合、原子炉と使用済燃料貯蔵プールの冷却に必要な資源と手順を保持するとともに、格納容器を温存すること。発電所内の熱を環境中に安全に逃す能力についても、同様である。また、(2)過酷事故の発生後、使用済燃料貯蔵プール内の水位を確実に計測するための機器を維持すること。そして、(3)炉心と格納容器、および使用済燃料貯蔵プールを外部ハザードから防護する上で、必要な資源を温存すること――である。

 NRCスタッフは、同規則案について2016年に一般からコメントを募集。それらに対応して、いくつかの部分を削除、再編成、明確化、あるいは強化したとしている。また、規則の制定に関して2011年7月に申し立てられた5件の請願を解決するとともに、同年5月に提出されていたもう一件についても、部分的に解決していると説明。NRCとしては今後も、改定されたサイト毎の耐震性評価や洪水リスク評価への対応で、追加の分析が必要になるかなど、福島第一事故後の対応を事業者とともに続けていくとしている。
 
 同規則案について、NRCとしては表決により最終承認したものの、5人の委員中、民主党支持派のJ.バラン委員と中立派のS.バーンズ委員はその内容に異議を唱えていた。表決後のコメントの中でバラン委員は、同規則案では数十年前の地震学や水文地質学に基づいた、時代遅れの災害にしか対応していないと指摘。住民の健康や安全性を確保する上で必要な改善と基準の改訂を、同委員は強く主張するとした上で、「NRCの多数派委員が、福島第一事故後の重要な安全規則を骨抜きにしてしまった」との評価を下している。

 一方、米原子力エネルギー協会(NEI)のM.コースニック理事長は、「米国内の原子力発電所が最大級のハリケーンや地震などにも耐えられるよう設計されていることが確認された」とコメントした模様。さらに、原子力発電所では、完成後も極端な自然災害に対する防護策としての追加機器等に、40億ドル以上投じられていると指摘したことが伝えられている。

 (参照資料:NRCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)