ロシア、軽水炉用事故耐性燃料の原子炉試験 開始

2019年2月6日

TVEL社のATF燃料棒©ロスアトム社

 ロシア国営の原子力総合企業ロスアトム社は1月28日、同国で初めて軽水炉用に開発された事故耐性燃料(ATF)の実験集合体を、ウリヤノフスク州ディミトロフグラードにある原子炉科学研究所のMIR材料試験炉に装荷したと発表した。
 これはロスアトム社傘下の燃料企業、TVEL社によるプロジェクトの一部。MIR材料試験炉の水流ループを使って、設計外事象による過酷事故で同燃料の耐性を試験するのが目的である。また、同社のATF研究開発と設計・試験は、モスクワ市にあるロシア無機材料研究所(VNIINM)が準備・調整している。
 ロシア製ATFとして開発に成功した後は、市場で売り出す計画で、研究炉を使った試験の第一段階およびその後の関係調査は年内に完了させ、これに続く段階では、ATF燃料棒が含まれる実験集合体をロシア国内の商業炉に装荷するとしている。

 今回、TVEL社の子会社が製造した実験集合体は、ロシア型PWR(VVER)用と外国製PWR用の2体で、これらに24本ずつ、被覆管と燃料ペレットで異なる材料を組み合わせた4種類のATF燃料棒が組み込まれた。被覆管は、ジルコニウム合金にクロムをコーティングしたものと、クロムとニッケルによる合金製の2種類。燃料ペレットも、従来型の酸化ウラン製のほかに、ウランとモリブデンの合金を使ったものの2種類が用意された。後者については、密度と熱伝導率が向上したとしている。
 また、今回の試験で非常に重要な点としてロスアトム社は、MIR材料試験炉の設計であれば、離れたループで並行して、異なる原子炉設計の燃料試験を同時に行えると指摘した。VVERと外国製PWR、両方の冷却材パラメーターも含めて、通常運転に出来るだけ近い条件で試験を実施し、得られたデータに基づき、被覆管と燃料ペレットの合理的な組み合わせを選択するとともに、軽水炉炉心の中性子物理学的な特性を計算・確認するとしている。
 
 (参照資料:ロスアトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの1月29日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)