米ボーグル発電所でフラマトム社製・事故耐性燃料の試験集合体を装荷

2019年4月8日

©サザン・ニュークリア社

 米ジョージア州でA.W.ボーグル原子力発電所(120万kW級PWR×2基)を操業するサザン・ニュークリア社は4月5日、燃料交換と保守点検のための停止期間中に、2号機でフラマトム社製の事故耐性燃料(ATF)を含んだ試験集合体が装荷され、3日付けで再起動したと発表した。
 このATFは、米エネルギー省(DOE)が主導する「事故耐性燃料開発プログラム」で開発中のもの。被覆管と燃料ペレットの両方にATFの概念が盛り込まれた先行使用・燃料集合体が、フルサイズの完全な形で商業炉に装荷されたのは初めてのことだとサザン社は指摘した。
 フラマトム社も、事故時に運転員が対応する際の時間的余裕と運転上の柔軟性が一層もたらされるような、経済性にも優れた新型燃料技術を開発できたことを嬉しく思うとコメント。同技術により、すでに安全な発電所の安全性が一層向上し、運転コストも軽減できる可能性があるとしている。

 米国では、福島第一原子力発電所事故後に軽水炉燃料の事故耐性強化が議論の的となり、議会は2012会計年度予算から、この目的に資する燃料と被覆材の開発プログラムでDOEに予算措置を講じると決定。2022年頃までに3段階で開発・実証戦略を進めることになり、フラマトム社のほかに、GE社と日立の合弁企業であるグローバル・ニュークリア・フュエル社、ウェスチングハウス(WH)社、ライトブリッジ社などが産業界から協力している。

 フラマトム社は、短・長期的に世界中の原子力発電所に先進的な燃料システムを提供するため、サザン・ニュークリア社との協力による独自の「PROtectプログラム」を通じて、最先端の研究開発活動を実施中。クロムをコーティングしたジルコニウム合金製の被覆管により、冷却材の喪失時に燃料が高温で酸化したり水素が発生したりすることを抑制。通常運転時においても、この革新的なコーティング技術でデブリが腐食するのを抑えられるとした。
 これに加えて同社は、クロム合金の酸化皮膜を使った燃料ペレットも開発。これにより、燃料密度が高くなるほか、核分裂ガスの放出量が低下し、冷却材喪失時の挙動も改善されるとしている。

 福島第一発電所事故が発生する以前、同社は仏原子力・代替エネルギー庁(CEA)やフランス電力(EDF)などとともに、安全裕度を向上させる物質の概念について研究を実施していた。DOEとの協力においては、2016年までの第1段階で先進的な燃料と被覆材の概念に関する分析評価が完了。同年10月からは第2段階に移行しており、フラマトム社は2017年にワシントン州リッチランドでクロム合金の酸化皮膜を使った燃料ペレットの製造を開始したほか、アイダホ国立研究所で同燃料の試験も実施した。
 2018年には、同社はこれらの概念に基づく先行使用・燃料集合体の製造を開始しており、今回、商業炉への装荷が実現した。また、DOEは今年1月、フラマトム社とGE社、およびWH社に対して、ATF開発支援費として合計1億1,120万ドルを、2018会計年度および2019会計年度分として交付したと発表。フラマトム社は同月、28か月分の補助金4,900万ドルをDOEから受領したことを明らかにしている。

 (参照資料:サザン・ニュークリア社フラマトム社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの4月5日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)