ハンガリーのパクシュ発電所2期工事で付属施設の建設工事開始

2019年6月24日

付属施設の着工を記念してサイトに集まった関係組織のトップ達(右から2人目がシューリ担当大臣)©パクシュII開発会社

 ハンガリー唯一の原子力発電設備であるパクシュ発電所で、2期工事(5、6号機)の建設工事を担当する国営MVMグループのパクシュII開発会社は6月20日、建設サイトにおける準備作業の一環として、補助建屋や事務棟、倉庫など80以上の関係施設の建設工事を同日に開始したと発表した。
 120万kW級のロシア型PWR(VVER)を2基建設予定の同プロジェクトは、運転期間を延長して稼働しているI期工事の4基(各50万kWのVVER)を、最終的にすべてリプレースすることになる。
 補助建屋等の建設工事と並行して、これら2基の建設許可を申請するため、パクシュII開発会社はロシアのASEエンジニアリング社と緊密に連携し、約30万ページにおよぶ採用設計の技術文書を作成中。国家原子力庁(HAEA)に申請書が提出されるのは来年以降と予想されており、最初のコンクリート打設が行われるのは、早くても2021年になると見られている。

 ハンガリー政府は2014年1月、この増設計画をロシア政府からの融資により実施すると発表、翌月には総工費の約8割にあたる最大100億ユーロの低金利融資について両国が合意した。12月には双方の担当機関が、(1)原子炉建設のエンジニアリング・資材調達・建設(EPC)契約、(2)完成炉の運転・管理契約、(3)燃料の供給契約を締結している。
しかし、欧州連合(EU)の執行機関であるEC(欧州委員会)が2015年11月、これらの契約が公的調達に関するEU指令に準拠しているかや、EU域内の競争法における国家補助規則との適合性についても調査を開始。ECはそれぞれについて、翌2016年11月と2017年3月に承認裁定を下したものの、その他の問題も解決する必要性があったため、プロジェクトの実施は当初計画から少なくとも3年遅れている。

 ハンガリーはパクシュ原子力発電所で総発電電力量の約50%を賄っており、同発電所の拡張プロジェクト全体を管轄するJ.シューリ(無任所)大臣は、ハンガリー国民と国営企業が信頼性の高い国内電源から安価な電力を得ることは、ハンガリー経済の競争力を高める上で必要不可欠との認識を示した。
 同相は、パクシュ発電所がなければハンガリーの電気料金は、原子力より3倍高い再生可能エネルギーによって、少なくとも40%上昇すると指摘。また、地球温暖化の防止目標を達成するにも原子力が必要であり、原子力発電所を閉鎖している国では大気汚染が進んでいるとした。
 同相は実例として、脱原子力を進めているドイツの電力事情を説明。同国では天候頼みの再生可能エネルギーを利用しているため、不足分は火力発電所で補わねばならない。これにより、ドイツは2020年までにCO2の排出抑制目標を達成することはできず、同国民が払っている電気料金は、1kWhあたりハンガリー国民の3倍になると強調した。
 同相はまた、原子力発電所はCO2を出さずに産業規模の電力を生産できると指摘。太陽光による発電シェアの拡大に加えて、原子力発電シェアを維持するのはこのためであり、原子力はハンガリーによる地球温暖化政策の要になるとした。
 ハンガリーは現在、国内電力の3分の1を主に近隣諸国の火力発電所から確保していることから、パクシュ発電所の2期工事建設は地球温暖化対策としてだけでなく、エネルギー輸入量削減のためにも重要。ハンガリーのエネルギー供給保証を、他国の発電プラントに依存するわけにはいかないとの考えを示している。

 (参照資料:パクシュII開発会社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)