フォーラトム:2050年までにカーボン・ニュートラルな経済達成に向けたマニフェスト公表

2019年6月27日

 フォーラトム(欧州原子力産業会議)は6月26日、経済成長や雇用を維持しつつ、欧州が2050年までに脱炭素化を達成するには、新たに約1億kWの原子力発電設備設置に向けた投資が必要、などとする欧州原子力産業界の共同マニフェストを公表した。
 これは、欧州連合(EU)加盟各国の政策立案者に対して、同産業界のリーダー達が取りまとめたもの。EUの執行機関である欧州委員会(EC)は昨年11月、2050年までに近代的で有望、かつ競争力のあるカーボン・ニュートラル(CO2の排出量と吸収量が同量)な経済を目指した戦略的長期ビジョン「クリーン・プラネット・フォー・オール」を採択していた。
 フォーラトムのY.デバゼイユ事務局長はこれを「非常に野心的な目標」と評価し、脱炭素化のために利用可能なツールはすべて最大限に活用することが重要だとした。その上で、「原子力が地球温暖化との闘いにおいて極めて有用な資源であることは国際的に認知されており、我々原子力産業界としても自らの責務を果たす準備は出来ている」と宣言。同ビジョンの目標達成を阻む可能性がある障害は、原子力産業界とともに克服していくことを呼びかけている。

 フォーラトムはまず、欧州経済の脱炭素化を実現するには、低炭素な発電技術すべてに対する投資が重要になると指摘。これはすなわち、欧州の既存の原子力発電所における運転の長期化に加えて、相当量の新規原子力発電設備の建設を意味するとした。具体的には約1億kWが新たに必要だと述べており、どちらも欧州の原子力産業界や関係機関、EU加盟国が一丸となって取り組むことにより、達成できるとフォーラトムは認識。その際、原子力産業界が努力を傾注すべき点として、以下の項目を挙げている。

●必要量の原子力発電設備を期限通りに、競争力のあるコストで設置する。

●その他の部門の低炭素化で原子力産業界が支援可能な分野を特定するため、欧州で研究開発と技術革新を進める。

●エネルギー供給保証に貢献する。

●責任ある方法で使用済燃料と放射性廃棄物の管理を続ける。

●人的資源を維持するとともに、確保のための投資を行う。

●欧州域外の市場に向けて、原子力技術や技能を輸出するための盤石な基盤を構築する。

それと同時に、EUに対しては以下の点を実行するよう勧告している。

●2030年や2040年までの中期的CO2排出抑制目標も含めて、EU電力部門における2050年のカーボン・ニュートラル化目標を受け入れる。

●欧州原子力共同体(ユーラトム)も含めて、明確で一貫性のある安定したEUの政策枠組を維持する。

●低炭素で競争力のある発電オプションすべてに対し、投資を促進する市場の枠組を開発し、実行に移す。

●送電網の安定化に資する原子力の役割を理解した上で、再生可能エネルギーの発電シェア拡大に繋がるような、安定した低炭素エネルギー・ミックスの実現を支援する。

●小型モジュール炉(SMR)などの将来技術も含め、欧州が原子力技術面でリーダーシップを維持するための強固な産業戦略を策定・実行する。

●原子力技術の継承や世代交代を確実に行うため、若い世代を原子力産業界に呼び込むための支援を行う。

 (参照資料:フォーラトムの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月26日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)