米エネ省、2019会計年度の先進的原子力研究開発支援に約5,000万ドル

2019年7月1日

 米エネルギー省(DOE)は6月27日、国立研究所や大学等における先進的原子力技術の研究開発プロジェクトに対し、2019会計年度の支援金として4,930万ドルを投資すると発表した。

 あらゆるエネルギー源を活用するという全方位的エネルギー戦略の中で、DOEは原子力が重要な部分を占めると認識しており、将来を見据えた先進的原子力技術の開発に毎年投資支援を行っている。今年は原子力関係の研究開発と施設利用、分野横断的技術やインフラの開発など、25州における58件のプロジェクトを対象に選定。初期段階の研究開発を支援することにより、原子力発電が今後も長期的にクリーンで信頼性が高く、一時的な機能不全等から復帰する力(レジリエンス)も強い電源であり続けられるよう支援していく考えだ。
 2009年以降、DOE原子力局がこの関連で行った投資は、今年の支援額も含めて6億7,800万ドル以上。これらは、クリーン・エネルギー開発における技術革新で米国がリーダーシップを維持するとともに、原子力関係の次世代エンジニアや科学者を教育訓練するために活用されている。

 DOEの投資は毎年、関係イニシアチブの「原子力エネルギー大学プログラム(NEUP)」、「原子力エネルギー実践技術(NEET)」、および「原子力科学ユーザー施設(NSUF)」を通じて行われている。
 NEUPとしてはまず、大学の主導により23州で行われている40件の原子力研究開発プロジェクトの支援に2,850万ドル以上を提供。今回は、小型モジュール炉(SMR)や溶融塩炉、鉛冷却高速炉関係のプロジェクトが主流。全米でもトップクラスの科学・エンジニアリング関係学部とその学生に、民生用原子力部門における革新的技術やソリューションの開発機会を与える。
 DOEはこのほか、7件の大学主導プロジェクトに対して、研究炉と関係インフラの改善用に160万ドルを提供。ここでは、大学の研究炉25基と研究・訓練用インフラについて、安全性や性能の改善と学生の教育訓練に関わる性能のアップグレードが行われるとした。

 DOEはまた、国立研究所と大学が実施するNEET関連の研究開発プロジェクト5件に、合計450万ドルを供給する。これらのプロジェクトでは、新型炉用の先進的なセンサーや計装設備の開発、機器の製造方法、および材料物質の開発など、分野横断的な課題に取り組むことになる。

 DOEはさらに、原子燃料や材料物質の適用調査にNSUFを活用するという大学主導のプロジェクト2件、国立研が主導する1件、および産業界が率いる3件を選定。中性子とイオンの照射試験や照射後試験施設、シンクロトロン・ビーム設備、試験の設計・分析に必要な技術支援などについて、施設と専門的知見を活用するこれら6件の合計で、1,000万ドル以上を提供する。
 これに加えて、6件のうち共同で研究開発が行われる3件に対しては1件につき50万ドルずつ、合計150万ドルを拠出。また、NEUPの研究開発プロジェクト2件については、NSUF施設の利用基金として合計300万ドルを支援するとしている。

 (参照資料:米エネ省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの6月28日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)