米オハイオ州で原子力発電所の支援法案が可決成立

2019年7月25日

 米オハイオ州で7月23日、CO2を排出しない原子力発電所への財政支援を盛り込んだ法案が、ニューヨーク州、イリノイ州、コネチカット州、およびニュージャージー州に続いて立法化された。
 これはオハイオ州議会で同日、可決成立した下院法案(HB6号)にM.デウィン州知事が即日、署名したもの。州内で早期閉鎖のリスクにさらされていたペリーとデービスベッセ、2つの原子力発電所を所有するファーストエナジー・ソリューションズ(FES)社は翌24日、法案の成立を讃えるととともに、これらの原子力発電所の早期閉鎖指示を撤回し、デービスベッセでは翌春の停止期間中に燃料交換するための準備を直ちに開始するとしている。

 FES社は2018年3月、オハイオ州のこれら2つの原子力発電所、およびペンシルベニア州のビーバーバレー原子力発電所について、州政府から支援が得られない限り、2021年までにすべて早期閉鎖する方針を公表。理由として、同社の顧客エリアでは北米最大の地域送電機関(RTO)である「PJM」が電力システムと卸電力市場を運営しており、その容量オークションで良い結果が得られないことや、電力価格の低迷、電力需要の将来的な伸び悩みなどを挙げていた。
 FES社はその後、同様にファーストエナジー社の子会社である2社とともに、同月末に連邦破産法の再建型処理手続、第11条の適用を州内の破産裁判所に申請している。

 HB6号法案は、クリーンなエネルギー源と認定された電源に対して、発電量1MWh毎に一定の行使価格を設定した「クレジット」を付与し、州内で低炭素な電源を維持・開発することを目的としたもの。今年4月にオハイオ州の下院議員11名が超党派で議会に提出した。
 現地の報道によると、同法案により、年間で最大1億5,000万ドルが顧客の電気料金から徴収され、州内の原子力発電所にもたらされる。州議会・下院が5月に同法案を可決した後、上院が同法案を審議しており、原子力発電所への補助金交付を1年先送りする修正を加えて、7月17日付けで可決。下院はこの変更に同意するか、改めて審議していた。

 FES社は今回の法案成立により、オハイオ州は高度なスキルを必要とする4,300名分の雇用と、州経済にとって重要な原動力を維持することになると指摘。州内で無炭素電力の90%と数多くの雇用を維持する重要性、多様な電源構成下で適正価格の電力を供給する必要性を、議会の有力者が十分理解し、支援してくれたお陰だと述べた。
 米原子力エネルギー協会(NEI)も23日に法案成立を歓迎する声明文を発表し、M.コースニック理事長は「(同法案によって)州内のクリーン・エネルギー源の大半が運転を継続できる」と強調。州内の無炭素電力や雇用の維持に貢献しているとした。
 NEIはまた、無炭素電源である州内の原子力発電所維持は賢い投資であり、毎日24時間、年中無休で信頼性の高い低価格の電力安定供給を保証できると指摘。今回の決定は、先行して同様の法案を成立させた4州の支援策に賛同し、原子力がCO2排出量の削減に大きな役割を果たすことを再確認したとしている。

 (参照資料:FES社NEIの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの7月24日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)