米エネ省、多目的試験炉の建設に向け環境影響声明書の作成準備開始

2019年8月6日

VTRの概念図©DOE

 米エネルギー省(DOE)は8月5日、多目的試験炉(VTR)の開発に向けて、環境影響声明書(EIS)の作成準備を開始したことを同日付の連邦官報に公表した。
 低炭素で大容量の電力を国内送電網に供給可能な新型の民生用原子炉を設計するため、DOEは米国内で次世代燃料や材料物質の照射試験を行えるVTRを建設した際の環境影響を調査する方針。国家環境政策法(NEPA)に基づくプロセスの最初のステップとして、EIS案文に含める評価項目や建設選択肢などについて、9月4日までの日程で一般国民から意見を募集する。また、VTRやNEPAプロセスに関する情報を一般国民に広く提供するため、ウェブ上の双方向ヒアリング会合も8月末に2回、開催するとしている。

 高速中性子の照射施設となるVTRは、革新的な原子燃料や資機材、計測機器などを必要とする新型炉の研究開発で重要な役割を担うことから、国内でのVTR開発は、昨年9月に成立した「2017年原子力技術革新対応法(NEICA2017)」で必要性が強調されていた。米国内では高速中性子の照射施設が20年以上存在していないため、DOEは2025年12月31日までにVTRの建設を傘下のアイダホ国立研究所(INL)内で完了し、最大限に実用可能な施設として2026年初頭から運転開始することを計画している。
 DOEはまた、2018年11月にVTR開発プログラムの支援企業としてGE日立ニュークリア・エナジー(GEH)社を選定。同社のモジュール式ナトリウム冷却高速炉「PRISM」で実証済みの技術を、VTR開発に活用する方針を明らかにした後、今年3月にはTVRの概念設計に取りかかると発表していた。

 DOEのR.ペリー長官によると、VTRが提供する様々な試験の実施能力は、国内の原子力インフラを近代化するとともに、放射性廃棄物の発生量削減や原子力セキュリティの向上など、革新的な原子力技術を開発する上で非常に重要なもの。高速中性子を使って多目的な試験を実施できる原子炉が国内に存在しないことは、国家戦略上、大きなリスクであり、DOEがエネルギー供給や環境面、および原子力面で保証を向上させる能力にも影響が及ぶと強調した。
 DOEのR.バランワル原子力次官補も、先進的原子力技術の開発能力という点で、米国がこれ以上、後れをとることがないよう、スケジュールを加速する必要があると指摘。米国で革新的技術の導入者が出来るだけ早くこの能力を得られなければ、原子力技術の支配権は今後も中国やロシアに一層シフトしていき、米国の原子力部門は多大な損失を被ることになるとしている。

 今回始まったNEPAプロセスを通じて、DOEはTVRプロジェクトの最終判断を下す前に、環境面のあらゆるファクターを考慮に入れることを保証した。9月までに得られた意見を元にEIS案文における評価範囲を定め、その後の数か月間で同案文の分析を完了する。その後さらに45日間で、これに対する意見を募集して、EISの最終版を確定するとしている。
 なお、現段階でDOEは、VTRをテネシー州のオークリッジ国立研究所で建設する選択肢も考慮中。さらに、VTR用の燃料を、INLかサウスカロライナ州サバンナリバー・サイトのどちらかで製造加工することも検討していると述べた。

 (参照資料:米エネ省の発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)