ウェスチングハウス社、北米等におけるロールス・ロイス社の民生用原子力事業を買収

2019年9月30日

 米国のウェスチングハウス(WH)社は9月26日、英国のロールス・ロイス社から北米等における民生用原子力システムとサービスの事業を買収することで同社と正式契約を交わしたと発表した。
 この買収により、同社はデジタル化サービスやエンジニアリング・サービス、プラントの自動化、モニタリング・システム、現場サービス、製造等の分野で能力を強化し、中核事業におけるプレゼンスを拡大する。運転中プラントに対するWH社のサービス能力を高めることになり、同社の成長戦略にとって重要なステップになると指摘。顧客の視点から見た価値の創出など、同社の主要な原動力である顧客関係の事業を後押ししていくとした。
 一方のロールス・ロイス社はこの取引によってグループ事業を簡素化し、顧客にとって不可欠な電力ニーズに集中的に取り組む方針である。なお、この取引の実行には、規制当局から承認等を得る必要があるとしている。

 両社ともに売買取引の金額を公表していないが、ロールス・ロイス社が拠点を置いているカナダ、仏国、英国、米国の11か所のうち、カナダと米国の民生用原子力サービス事業すべてに加えて、仏国ボクリューズ県のモンドラゴン、およびパワー・システム事業の一部が置かれている英国のゲーツヘッドが買収対象となった。
 一方、計測制御(I&C)系事業部がある仏国のグルノーブルは対象から外されたものの、ロールス・ロイス社は未だ、売却することを検討中。また、英国における新規原子力発電所の建設事業、同社が現在開発中の小型モジュール炉(SMR)関係の活動は、売却の対象外である点を強調している。

 WH社は今回の買収を通じて、以下の項目を実行するとした。すなわち、

・運転中プラント向けサービスの能力を拡大・向上させる、

・会社全体でデジタル化を推進し、顧客ニーズの収集や維持管理を合理化する。また、コスト効果を最大限に高めるため、エンジニアリング・ソリューションを提供する、

・両社のプレゼンスと両者間の相乗効果拡大、また、現場サービスとプラントの自動化事業における顧客の経験や顧客側からの提案も踏まえ、WH社とロールス・ロイス社が世界中で保有する顧客基盤を下支えする、

・北米および欧州の原子力市場で顧客を支援しつつ、WH社をさらに成長させる――である。

 (参照資料:WH社ロールス・ロイス社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの9月27日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)