GEH社、エストニアにおける同社製SMRの建設可能性調査で同国企業と協力覚書

2019年10月7日

「BWRX-300」の概念図©GEH社

 米国のGE日立・ニュクリアエナジー(GEH)社は10月3日、北欧バルト三国の1つエストニアで、同社製の小型モジュール炉(SMR)「BWRX-300」を建設する可能性を探るため、同国のエネルギー企業フェルミ・エネルギア社と協力覚書を締結したと発表した。
 フェルミ・エネルギア社はエストニアにおける第4世代炉の導入を目的に、同国原子力産業界でSMR開発/建設を支持する専門家らが設立した企業。2030年代初頭にも欧州連合(EU)初の第4世代SMRを国内に建設する方針で、2020年1月には複数のSMRについて、フィージビリティスタディの結果を公表する計画である。「BWRX-300」に関しては、同社とGEH社は今回の覚書に沿って、建設の経済的な実行可能性を検証するとともに、立地要件や原子力規制要件の評価を行うとしている。

 GEH社の発表によると、「BWRX-300」は出力30万kWの軽水冷却式原子炉で、自然循環等により冷却水を制御する受動的安全性を有している。2014年に米原子力規制委員会(NRC)から設計認証を受けた150万kWの第3世代+(プラス)設計「ESBWR(高経済性・単純化BWR)」がベースとなっており、実証済みの技術を用いた機器や設計を簡素化する革新的技術を採用。コンバインドサイクル・ガス発電や再生可能エネルギーに対しても、コスト面の競争力を持ったものになるとした。1MWあたりの資本コストも、GEH社は既存の大型原子炉やその他の軽水冷却式SMRとの比較で、最大60%軽減できると強調している。

 フェルミ・エネルギア社のK.カレメッツCEOは、覚書を結んだ理由について、「エストニアはエネルギーの自給維持と、カーボン・ニュートラルな状態の達成のため、新世代のSMR技術を必要としている」と説明。BWR技術については、「安全かつ経済性と信頼性が高く、CO2を出さないエネルギー技術であることは北欧諸国ですでに、数十年にわたって実証されている」とした。「BWRX-300」技術についても、投資の可能性と競争力の高い設計であると評価している。

 同社はこのほか、燃料ピン型溶融塩炉「SSR-W」の国内建設に向けて、サイト関係のフィージビリティスタディと適切な許認可体制の開発を実施するため、今年3月に開発企業の英モルテックス・エナジー社と了解覚書(MOU)を締結した。
 モルテックス社の発表によると、オイル・シェールを主要な電源とするエストニアでは、2030年までに大部分の化石燃料発電設備が運転を終了する。バルト海諸国の一員として風力発電に一定の可能性が見出される一方、エネルギー自給を維持するため、エストニアは信頼性の高い代替電源を必要としている。近隣のラトビアやリトアニア、フィンランドが皆、完全な電力輸入国であることから、エストニアで安全かつクリーンな電源が確保されれば、この地域全体のエネルギー供給保障が改善されると強調している。

(参照資料:GEH社モルテックス・エナジー社の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの10月3日付「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)