カナダの3州の首相がSMR開発で協力覚書

2019年12月3日

     ©ニューブランズウィック州政府

 カナダ・オンタリオ州のD.フォード首相、ニューブランズウィック州のB.ヒッグス首相、およびサスカチュワン州のS.モー首相は12月1日、出力の拡大・縮小が可能で革新的技術を用いた、多目的の小型モジュール炉(SMR)をカナダ国内で開発・建設するため、3州が協力覚書を締結したと発表した(=写真)。
 3人の首相はともに、原子力発電は炭素を出さず信頼性が高く、安全で価格も手ごろな発電技術と認識しており、SMRは遠隔地域などを含むカナダ全土において、経済面の潜在的可能性を引き出す一助になると明言した。同覚書に法的拘束力はないものの、今後は3州のエネルギー大臣が2020年1月から3月の間に冬季会合を開催して、最良の開発・建設戦略を議論。国内の主要な発電事業者には、費用対効果検討書も含めたフィージビリティ報告書の作成で協力を求める方針であり、同年秋までにSMRの戦略的開発計画を策定するとしている。

 SMRの利点について3首相は具体的に、送電系統とつながっていないコミュニティに対してもクリーンで低コストなエネルギーを供給できるとしたほか、鉱山業や製造業などエネルギー多消費産業に対して便宜を図れるなどと指摘。また、SMR技術がカナダのみならず世界中で採用されれば、カナダの経済成長を促すとともに輸出機会を拡大することにもつながるとした。
 こうしたことから、3州の政府はそれぞれに特有の必要性や経済面の優先事項に見合う方法で経済を成長させ、温室効果ガスの排出量を削減するために協力体制を敷く方針。力を合わせて革新的なエネルギー・ソリューションを開発し、地域の雇用や成長促進に向けた最良のビジネス環境を創出していくと述べた。

 今回の覚書によると3州は、カナダ連邦政府の天然資源省が昨年11月に公表した「カナダにおけるSMRの開発ロードマップ」とともに、付託された「行動要請文」の策定に貢献した。カナダは原子力産業の全領域を備えるなど最上位に位置する原子力国家であり、SMR開発で先駆的国家となることにより、このように高度な革新的技術分野で戦略面や経済面、および環境面の利益が得られるとした。
 3州は世界でも有数の原子力企業が多数所在する地域であり、3州それぞれが州内でSMRを導入することに関心を抱いている。このような背景から、3州は以下の点について合意し、相互協力を行うことになったもの。

(1)地球温暖化や州内のエネルギー需要、経済開発などに取り組むため、それぞれの必要性に応じたSMRの開発と建設を3州が協力して進める。

(2)SMR開発における重要課題――技術的な準備状況、規制上の枠組整備、経済性と資金調達、放射性廃棄物の管理、国民および先住民との関わり合い――などに一致協力して取り組む。

(3)「原子力のようにクリーンなエネルギーは地球温暖化への取組みの一部として必要」という明瞭明解なメッセージが発せられるよう、3州が連邦政府に積極的に働きかける。

(4)3州内のオンタリオ・パワー・ジェネレーション(OPG)社、ブルース・パワー社、ニューブランズウィック・パワー社、およびサスク・パワー社のCEOから要請されたように、開発ロードマップで特定されたSMR開発への支援提供を、3州が協力して連邦政府に働きかける。

(5)原子力やSMRが有する経済面や環境面の利点について一般国民に情報提供するため、3州が協力する。
――などである。

 (参照資料:オンタリオ州政府の発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの12月2日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)