米BWXT社、エネ省が開発中の超小型炉用にTRISO燃料の製造契約獲得

2020年3月13日

©ORNL

 米バージニア州のBWXテクノロジーズ(BWXT)社は3月10日、エネルギー省(DOE)傘下のオークリッジ国立研究所(ORNL)が開発している超小型炉「トランスフォーメーショナル・チャレンジ・リアクター(TCR)」(=)用として、3重被覆層・燃料粒子「TRISO」の製造契約を子会社のBWXTニュークリア・オペレーションズ・グループ(NOG)社が獲得したと発表した。
 BWXT社は昨年10月、民生用の先進的原子炉や国防総省の超小型原子炉利用計画、宇宙探査機器の電源用原子炉など、近年浮上した様々な顧客の需要に応えるため、同州リンチバーグにあるTRISO燃料製造ラインの再稼働を決めたところ。今秋中にTCR用TRISO燃料の製造を完了するだけでなく、TCR本体の製造についてもORNLの継続的な開発に協力していく方針である。

 粒子核を黒鉛やセラミックスで被覆するというTRISO燃料技術は元々DOEが開発したもので、粒子核にはHALEU(U235濃縮度が5~20%の低濃縮ウラン)を使用。今回の契約でBWXT NOG社が請け負ったのは、代用物質を3重に被覆したものとHALEUの粒子核、およびHALEU粒子核を3重被覆した燃料粒子の3種類を製造・納入することであり、ORNLはこれらの物質を使って引き続き、様々な分野の科学技術を活用した先進的な短期間製造アプローチと原子炉の試作設計を開発する。
 今回の受注についてBWXT NOG社のJ.デュリング社長は、「先進的原子力技術で新たな市場を開拓するという当社の戦略上、非常に重要だ」と説明。材料の「付加的加工」(3Dプリンティング)等により製造した全く新しい低コストの原子炉で、DOEやORNLとともに安全かつクリーンな発電を実証していきたいと述べた。

 TCR実証プログラムは、ORNLが2019年に開始したもの。CO2を出さずに国内電力需要の約20%を賄い、50万人規模の雇用を支える原子力発電の将来を見据え、新規建設の最大ネックとなっている莫大な建設コストや長期間の工期という課題の克服を目指している。このためORNLは、原子炉の先進的な製造プロセスにより超小型炉を設計、建設、運転する方針で、ヘリウム冷却式で受動的安全性を備えた熱出力0.3万kWのTCR実証炉を2023年までにORNLの建屋内で建設するとしている。

 (参照資料:BWXT社ORNLの発表資料、原産新聞・海外ニュース、およびWNAの3月12日付け「ワールド・ニュークリア・ニュース(WNN)」)