米規制委、ホルテック社の集中中間貯蔵施設の建設計画審査で「環境影響面の問題なし」と報告

2020年3月16日

©ホルテック社

 米国のホルテック・インターナショナル社がニューメキシコ(NM)州南東部で進めている使用済燃料集中中間貯蔵(CIS)施設(=完成予想図)の建設・操業計画について、米原子力規制委員会(NRC)は3月10日、同施設が周辺住民や環境に及ぼす影響に問題なしと同委スタッフが結論付けた「環境影響表明書(EIS)」の案文を公表し、パブリック・コメントに付した。
 NRCは同社が2017年3月末に提出した建設許可申請書を約1年後に正式に受理し、技術的な評価審査を実施中。同審査は安全・セキュリティ面と環境影響面の両方について詳細に行われており、EIS案に関しては連邦官報に掲載後、60日にわたって一般からコメントを募集する。NRCはこの間、同案について複数回の公聴会を同州内で開催予定で、収集したコメントを検討した上でEISの最終版を作成、2021年3月に公表することになっている。これと並行して、安全・セキュリティ面の技術評価結果をまとめた「安全性評価報告書(SER)」最終版も同じく2021年3月の公表が予定されており、最終的に実施許可を発給するか否かの判断がこれらに続いて下される。

 米国では1982年放射性廃棄物法に従って、エネルギー省(DOE)が1998年1月から全米の原子力発電所の使用済燃料の引き取りを開始し、深地層処分することになっていた。しかし、2009年にB.オバマ政権がネバダ州ユッカマウンテンにおける最終処分場建設計画を打ち切った後、2012年に政府の有識者(ブルーリボン)委員会は「地元の合意ベースで最終処分場の立地を進めつつ、複数のCIS施設の建設」を政府に勧告。DOEは翌2013年、(1)中間貯蔵パイロット施設の操業を2021年までに開始し、(2)規模の大きい中間貯蔵施設を2025年までに利用可能にする、これらに続いて(3)最終処分場を2048年までに利用可能にする――などの管理処分戦略を公表していた。

 ホルテック社の計画は、NM州エディ郡と同郡内のカールズバッド市、およびその東側に隣接するリー郡と同郡内のホッブス市が設立した有限責任会社「エディ・リー・エネルギー同盟(ELEA)」と結んだ協力覚書に基づき、ELEAがリー郡で共同保有する敷地内でホルテック社が同社製の乾式貯蔵システム「HI-STORM UMAX」を建設・操業するというもの。
 操業は当初、約8,680トンの使用済燃料を封入した専用の銅製キャニスター500個を地下施設に貯蔵するが、最終的にこの数は1万個に達する見通し。これらのキャニスターは、全米の閉鎖済みないしは廃止措置中の原子力発電所から鉄道で輸送することになる。
 NRCのEISでは、対象施設の建設から廃止措置までプロジェクト全体の環境影響を評価。具体的には、土地の利用や使用済燃料の輸送、地層と土壌、地表水、湿地帯、地下水、生態学的資源、歴史的文化的資源、環境正義等の側面について評価を行ったとしている。

 NRCはこのほか、米国のウェイスト・コントロール・スペシャリスツ(WCS)社が仏オラノ社との合弁企業「中間貯蔵パートナー(ISP)社」を通じてテキサス州アンドリュース郡で進めているCISの建設計画についても、2018年8月に改定版の建設許可申請書を受理。ホルテック社のCIS計画と同様に申請書審査を実施中である。

 (参照資料:NRCの発表資料、原産新聞・海外ニュース、ほか)