「IAEA原子力人材育成コース”School of Nuclear Energy Management”」の概要

原産協会国際部 小西

 この研修コース(IAEAの呼称は「School」)は2010年から始まった。IAEAの目から見たグローバルなノウハウを新鮮な若い人にTransferすることを狙っている。講師陣、教材もIAEAリソースに原則限定したいとしており、講師はIAEA各部局の現役とOBOG、教材はIAEA刊行物を参照して作ってある。
 途上国の科学技術振興を援けることをMissionと位置づけるICTP(国際理論物理研究センター)との共催である。ICTPはIAEA、UNESCOおよびイタリア政府がその運営資金を支えている。
 

  1. 「研修(School of Nuclear Energy Management)」
     30ヶ国50名前後の若者(30歳前後)が3週間参加する。短期だが密度濃い「研修」である。
    IAEA各部局の課長クラスから「IAEAの業務と現代の課題」を聴き、英語で質疑・討議を重ねる。
    取り上げる課題は広範である。環境、エネルギー、核燃サイクル、不拡散、国際法、経済、広報など原子力発電を取り巻く課題、新規立ち上げに必要な枠組みの議論を通じ、その過程・連帯意識を学ぶ。と同時に、「原子力人生」で役立つ「ネットワーク」を作って職場に戻る。
     国際社会で働く人だけでなく、国内でビジネス、研究、行政に携わる人にも国際感覚を育てる有効な場である。

    pic_trieste2173IAEA/ICTPが強調する「Schoolの狙い」
    * 原子力新興国を中心に、今後の原子力界中堅となる若手を育成
    * IAEAに蓄積されているリソースの移転

  2. 研修の進め方
    (1) 各分野における最新のIAEA動向と課題(講義主体):講師は現役リーダー、OBOG経験者
    (2) 若者同士で課題分析と解決策を議論(小グループ討議と全体討議)、メンターが補佐
    (3) 小グループによる事例調査研究(実務課題についてのケーススタデイー)と発表会
     
     
  3. 第一回の学校に参加して
     参加者はNewcomer Countriesからを中心に約40名弱(30国弱、日本1)。女性は約2割。
     業態別では「官5学2研3民1弱」、途上国は国主導で計画を始めることを示している。原子力先進国と言えるのは日米ロ程度。他の多くはベトナムなど途上国。行政官、規制・学界関係者も少なくない。
     教官は講義担当の50余名、若者の議論を助けるメンター数名(一部兼任)が中心。
     一緒に過ごすメンターは今回不十分でRetireeの補充が課題。筆者は今回、全期間勤めた。
    * 若手技術者、行政官が原子力をグローバルな視点で理解し、今後の業務に活かす好機。
    * 新規導入国など途上国中堅層との「輪」を作る好機でもあり、「日本原子力の国際化」に有効。
    * 産官学それぞれで、横あるいは斜めパイプが太くなる。非公式の情報交換も可能に。
    * 期間「3週間」、参加経費(旅費、滞在費のみ)も約30万円で、日本の若者も参加し易いと思う。
    * IAEA担当官は日本で東南アジア対象のRegional School開催を視野に入れている模様。

(参考) 全体プログラム(講義別資料(pdf)もリンク)、ICTP2010報告TK