(香港)香港政府、原子力シェアの5割拡大を提案

2010年9月16日

 香港政府は、「気候変動対策として電力の5割を原子力で供給」とする政策を提案し、今年末までパブリックコメントに付している。同案は、エネルギー効率、輸送、燃料、廃棄物の燃料化、電源ミックスの改善の5項目からなっている。
 この目的は、電源ミックスのうち石炭火力の比率を下げることにある。現在の発電比率は、石炭が54%と優勢であり、天然ガスは23%である。
 そのほか再生可能エネルギーは無視できる程度で、残りの23%は、香港の電力大手である中華電力有限公司(CLP社)が25%の権利を持つ中国の大亜湾原子力発電所2基(各PWR、98.4万kW)からの供給である。大亜湾原子力発電所の発電量の約70%は香港に送られている。
 新規の石炭火力発電所建設は1997年以降許可されておらず、1980年代に建設された石炭火力発電所は2020〜2030年には退役となる。政府は、2020年迄に石炭火力の寄与を10%以下に減少させるために、天然ガスを40%、原子力を50%に引き上げる計画である。再生可能エネルギーは3%に引き上げられ、残りの石炭火力は(低い利用率での)予備電源として維持される。
 石炭の代替として原子力発電の比率を高めていくことは、最良の方法であり、大気汚染を防ぐことになる。大亜湾原子力発電所からの送電が始まった1994年には、年間約7百万トンの温室効果ガスの排出が削減された。天然ガスの場合は石炭火力に比べ約50%の温室効果ガス削減につながる。
 香港は特別行政区として一定の政治的独立性を保持しているが、2009年11月の中国政府の気候変動に関する約束を履行する義務がある。中国政府が、GDP当たりのCO2排出量を2020年迄に05年比40〜45%削減する目標を設定しており、原子力は、エネルギー効率及び再生可能エネルギーとともに目標達成のためのカギといえる。しかし、香港当局は、2020年までに温室効果ガスを50〜60%削減という野心的な目標を打ち出している。これは、香港政府と広東省政府の間の1億2000万人以上が住む珠江デルタ地帯に関する合意によって支持されている。両政府の合意の骨子は、「香港の石炭火力を漸次削減し、原子力発電及びクリーンなエネルギー供給を増やす」というものである。
 CLP社は、この政府の意向に沿うべく「低カーボン社会をめざす政府を支持していく」と述べている。昨年9月、CLP社は大亜湾原子力発電所の電力量の7割の受電を2034年まで延長することに合意、7月には陽江原子力発電所に17%の出資をすると発表した。同原子力発電所は6基が建設中で2017年迄に運開予定である。これらの合意はCLP社と中国広東核電集団有限公司の間で結ばれたものである。
 CLP社は、原子力発電からの電力輸入増は適切な判断であるものの、今後10年で多くのやることがあると指摘している。「正しい方向だとの公衆の合意が得られれば、直ちに行動する必要がある。商業ベースの話し合いは時間がかかるし、同様に国境を越えたインフラ整備の時間も必要だ」としている。
(2010年9月15日付WNN)


(原産協会・国際部まとめ)