スイス世論に再び脱原子力傾向 建て替え計画に暗雲

2011年4月8日

3月31日、スイス北部オルテンにある原子力協会の事務所に小包爆弾が届き、事務職員2名が軽傷を負うという事件が起きた。後日、イタリア過激派組織による犯行声明が発見され、原子力発電に対する抗議が目的ではなかったことが判明。しかし、1990年から10年以上、原子力モラトリアム政策を取っていた同国だけに、事件発生当初は福島第一原発事故を契機に同国民の中に原子力に対する疑念が再燃したことを疑わせた。


爆弾の届いた原子力協会は、ALPIQ社、AXPO社およびBKW社などの電力グループを代表する団体。同国の原子炉5基のうち、4基が約10年後に運開後40〜50年に達するため、これら3グループは共同計画会社を通じて、ゲスゲン、ミューレベルクおよびベツナウの各原子力発電所のうち、最終的に2サイトで代替炉を建設することを計画。08年から10年にかけて政府に計画申請書を提出していた。


しかし、福島原発事故発生の報を受けた同国のD.ロイタード環境・輸送・エネルギー・通信大臣は14日、これらの承認手続きの暫時停止と既設原子炉の安全基準を一層厳格化するための検証作業実施を決める。現地の大手大衆紙「ル・マタン」も日曜版で実施した世論調査結果を背景に、同事故を契機に国民世論が大きく反原子力に傾いたと報じている。


ベツナウ発電所サイトは、原子炉建て替え用地として政府が承認済み

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