G7 気候・エネルギー・環境閣僚会合(イタリア・トリノ)における原子力産業界共同声明について

一般社団法人日本原子力産業協会

日本原子力産業協会は、イタリア・トリノにて開催中のG7気候・エネルギー・環境閣僚会合に先駆けて現地時間4月28日に開催されたサイドイベント「The Role of Nuclear in the Energy Transition: A Conversation on the Sidelines of the G7 Energy Ministerial」に参加しました。この中で、当協会は、カナダ原子力協会、米原子力エネルギー協会、英国原子力産業協会、世界原子力協会、欧州原子力産業協会、イタリア原子力産業協会、フランス原子力産業協会と共に、G7閣僚会合に向けた共同声明に署名しました。また、共同声明に署名した8団体を代表してイタリア原子力産業協会モンティ理事長から、閣僚会合の議長を務めるイタリア環境・エネルギー安全保障フラティン大臣に声明文を手交しました。

この共同声明では、G7各国政府に対し、COP28で設定された目標を達成するための原子力導入に関する明確な計画を策定するとともに、原子力に対するコミットメントを示し、市場や投資家に明瞭なシグナルを示すよう求めています。各国政府は、既存原子力発電所の最大限活用に加え、新規建設や、新たな原子力技術の開発・実証を加速することで、発電におけるネットゼロを達成するとともに、エネルギー分野以外の産業分野における脱炭素化を支援すべきとして、運転期間延長に最適な条件整備、原子力プロジェクトの資金調達と投資回収のメカニズムに関する投資家への情報提供、多国間金融機関への働きかけ、サプライチェーンの発展や原子力研究への投資、原子燃料供給能力などについて、果断な行動を取るよう要請しています。

【共同声明】

Nuclear industry statement to the G7 Ministerial Meeting on Climate, Energy and Environment in Turin (28-30 April 2024)

【共同声明仮訳】

トリノで開催される G7 気候・エネルギー・環境閣僚会合(2024 年4月28~30日)に対する原子力産業界の声明

私たちG7諸国やワールドワイドに原子力産業を代表する産業団体は、トリノで開催されるG7気候・エネルギー・環境大臣会合に向けて意見を提出できることを歓迎します。私たちは、常に安全かつ安心な原子力施設の運営に努め、手頃な価格でクリーンな低炭素電力と熱を供給し、再生可能エネルギーを補完して電力生成におけるネットゼロを達成し、重工業などの脱炭素化が難しい部門の脱炭素化を実現し、経済成長を促進する高品質で長期的な雇用を生み出すことを約束します。

COP28のグローバル・ストックテイクでは、気候変動の緩和を支える原子力の役割が全会一致で合意され、COP28期間中の宣言では、25カ国が2050年までに世界全体で原子力発電容量を3倍にするという、より野心的な目標を設定しました。先月、ブリュッセルで開催された原子力サミットでは、G7の6カ国を含む30カ国以上が、温室効果ガスの排出を削減し、エネルギー安全保障と産業競争力を確保するために、原子力に重要な役割があることを改めて強調しました。

私たちは、2023年に札幌で開催されたG7会合において、原子力エネルギーが戦略的グローバル資産として認識され、支持されたことを歓迎し、以降とられた行動を称賛します。私たちは、カナダ、フランス、日本、英国、米国が、安定した燃料供給のための濃縮・転換の拡大に42億ドルを拠出することを約束し、この目標を上回る成果を挙げたことを歓迎します。また、今年のG7会合のホストを務めるイタリア政府に祝意を表します。イタリアのサプライチェーン企業は、G7すべての国の企業と同様に、世界的な原子力開発と展開に大きく貢献しており、重要な役割を果たしています。

現在、G7諸国は、世界の既存の原子力発電能力の半分以上と、最も有望な先進原子力技術を保有しています。G7諸国は運用経験、燃料サイクル能力、規制能力、資金調達力を有しており、原子力発電を新たに導入する国々が、気候およびエネルギー安全保障上の目標を達成するために、安全かつ安心で責任ある方法で展開できるよう支援することができます。

私たちは、G7各国政府に対し、COP28で設定した目標を達成するための原子力導入に関する明確な計画を策定し、原子力に対するコミットメントを示し、市場や投資家に明確なシグナルを示すよう求めます。そのため我々は、各国政府に対し、原子炉の運転期間を延長し、実現可能な限り停止中の原子炉を再稼働させることを含め、既存の原子力発電所の最大限の利用を支援することを奨励します。各国政府は、実証済みの設計に基づく新たな原子力施設の展開を加速し、大型の原子炉や小型モジュール炉、改良型モジュール炉を含む、新たな原子力技術の開発、実証、展開を加速し、発電におけるネットゼロを達成するとともに、重工業向けの熱供給、水素製造、合成燃料の製造など、エネルギー分野以外の、脱炭素化が困難な産業分野の脱炭素化を支援すべきです。

これらの目標達成を支援するため、私たちはG7気候・エネルギー・環境大臣に対し、以下の主要分野で果断な行動を取るよう要請します。

  • 一貫性と整合性のある長期的政策を通じて、既存原子炉の運転期間延長と原子力技術のフリート展開を可能にする最適な条件を整備する。
  • 原子力プロジェクトの資金調達と投資回収のメカニズムについて投資家に明確な情報を提供する。
  • 原子力開発のための国内外の気候金融メカニズムへのアクセスを確保する。
  • 多国間金融機関が原子力エネルギーを投資ポートフォリオに含めるよう働きかける。G7の連帯した意思表明は、多国間金融機関の政策に大きな影響を与える。
  • 原子力エネルギーとその関連燃料サイクルを、明確かつ曖昧さのない表現で持続可能な投資として位置付ける。
  • サプライチェーンの発展を促進し、拡大目標に見合った原子力研究への投資を継続する。G7 諸国とそのパートナー国の協力はサプライチェーンの準備態勢を強化し、効率的な原子力建設を可能にし、品質を確保し、コスト効率の良い機器やサービスを実現する上で不可欠である。特に原子燃料供給のためのウラン濃縮と転換における供給網能力の開発を加速し、セキュリティとレジリエンスを確保すべきである。

原子力エネルギーは世界にとって計り知れない可能性を秘めており、G7は将来にわたって戦略的優先事項として原子力活用を推進するべきです。

以上

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