世界の運転中原子力発電所は 431基、4億928万kW エネルギー安全保障と脱炭素化へ、高まる原子力への期待 ―「世界の原子力発電開発の動向」2023年版を刊行―
⼀般社団法⼈ ⽇本原⼦⼒産業協会
日本原子力産業協会は「世界の原子力発電開発の動向」2023年版を刊行しました。本書は、当協会が世界の原子力発電関係施設から得たアンケート等を基に、2022年における世界の原子力発電開発の主な動向と、2023年1月1日現在のデータをとりまとめたものです。
化石資源への投資低迷、新型コロナによる経済停滞からの回復によりエネルギー需給の逼迫と価格高騰が生じる中、2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻によって、この傾向に一層の拍車がかかりました。2022年はエネルギー安全保障と気候変動対策において、世界的に原子力の役割に対する認識が高まったといえます。
2022年は多くの国で既存の政策が見直され、英国、フランス、米国、カナダなどが原子力推進の加速を打ち出し、ベルギーでは原子力の廃止時期を遅らせる決定をしました。脱原子力政策だった韓国が原子力推進・拡大に転換し、スウェーデンも原子力開発に対する厳しい制約の撤廃を決めました。中国やロシアは引き続き原子力開発を続けており、インドも原子力拡大を表明。ポーランド、ルーマニア、チェコなどでは新増設に向けた動きが具体化し、エジプトでは同国初の原子力発電所建設が始まりました。日本においては、GX(グリーントランスフォーメーション)基本方針が閣議決定され、原子力を最大限活用することが明記されたほか、廃止決定したプラントのリプレースを可能とする方針が示されました。
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― 集計結果 ―
■中国、韓国、パキスタン、UAE で、5 基が営業運転開始
今回の調査で営業運転開始が明らかになったのは、4カ国5基、618万kWであり、その内訳は、中国で2基、韓国、パキスタン、アラブ首長国連邦(UAE)で各1基であった。一方、ベルギー、英国、米国で5 基、386.7万kWの閉鎖が明らかになった。運転中の原子炉の基数は前回調査と同じ431基、合計出力は前回調査より238.8万kW 増加して4 億928.1万kWとなった(アンケート等の調査結果により出力変更したものを含む合計出力。以下同様)。
中国では福清6号機(華龍一号、116.1万kW)が1 月1 日に送電開始、3 月25 日に営業運転を開始した。華龍一号の営業運転開始は、前年の福清5号機(116.1万kW)の初号機に続く2基目である。さらに紅沿河6号機(ACPR-1000、111.9万kW)が6月23日に営業運転を開始した。パキスタンでは、前年のカラチ2号機に続き、華龍一号設計を採用したカラチ3号機(110万kW)が4月18日に営業運転を開始した。UAEでは、前年のバラカ1号機に続き、バラカ2号機(韓国製APR1400、140万kW)が3月24日営業運転を開始。バラカ3号機は、10月8日に送電開始した。韓国では、新ハヌル1号機(APR1400、140万kW)が6月9日送電開始、12月7日に営業運転を開始した。
■中国5基、エジプト2基など計10基が着工、世界で建設中は72基、7,477.1万kW
2022 年中、10 基、995.8 万kW の原子力発電所が着工し、世界で「建設中」の原子力発電所は合計72基、7,477.1万kWとなった。
2022年に新たに着工したのは、中国5基、エジプト2 基、ロシア2 基、トルコ1 基の4 カ国、計10 基となっている。うち、中国では、CAP1000 が海陽3号機(125.3万kW)、三門3号機(125.1万kW)で着工した。CAP1000は、WE社製「AP1000」設計をベースとする中国版「AP1000」の標準設計である。華龍一号が陸豊5号機(120万kW)、ロシア製VVER-1200が田湾8号機(127.4万kW)、徐大堡4号機(127.4万kW)で各1基着工した。エジプトでは、エルダバ1、2号機(VVER-1200、各120万kW)が着工した。エジプトでは初めての原子力発電所の建設である。トルコでは、アックユ4号機(VVER-1200、120万kW)が着工した。また、ロシアのチュクチ自治管区ナグリョウィニン岬で係留される海上浮揚型原子力発電所(RITM-200C、2基、各5.3万kW)の船体の建設が中国の造船所で始まった。
■中国7基、インド10基、ポーランド5基、ロシア7基が計画入り
中国では7 基が計画入りした。陸豊3、4 号機(CAP1000、125 万kW)、陸豊6 号機(華龍一号、120万kW)、廉江1、2号機(CAP1000、125万kW)、漳州- Ⅱ 1、2 号機(華龍一号、112.6万kW)である。インドでは70万kW級PHWR、10基が計画入りした。カイガ5、6号機、ゴラクプール3、4号機、チャッカ1、2号機、マヒ・バンスワラ1、2、3、4号機である。ポーランドでは、5基が計画入りとなった。このうち、3 基は AP 1000(125万kW)である。ロシアでは、サハ共和国(ヤクーチア)ウスチ・クイガに陸上型SMRの1基(RITM-200N、5.5万kW)とチュクチ自治管区ナグリョウィニン岬の海上浮揚型原子力発電所(SMRのRITM-200C、5.3万kW×6基)が計画入りした。カナダでは、SMRがダーリントン新・原子力プロジェクト(BWRX-300、30万kW)として計画入りした。なお、フィンランドのハンヒキビ1号機(VVER-1200、120万kW)が計画外となった。フィンランドのフェンノボイマ社が2022年5月、ロシア企業による作業の遅れと能力不足を中止理由に挙げ、同年2 月のロシアによるウクライナ侵攻がプロジェクトのリスクをさらに高めていると述べた。計画中は前年比16基増の86基となった。