世界の運転中原子力発電所は433基、4億1,244万kW世界的に高まる原子力への評価
―「世界の原子力発電開発の動向」2024年版を刊行 ―

2024年4月5日

 日本原子力産業協会は「世界の原子力発電開発の動向」2024年版を刊行しました。本書は、当協会が世界の原子力発電関係施設から得たアンケート等を基に、2023年における世界の原子力発電開発の主な動向と、2024年1月1日現在のデータをとりまとめたものです。

 ロシアによるウクライナ侵攻の長期化と中東情勢の緊迫化は、化石燃料の価格高騰に拍車をかけ、エネルギー安全保障の重要性が再認識されることとなりました。こうした中、エネルギーの安定供給と脱炭素の両立を可能とする原子力への評価は世界的に高まっています。

 2023年の動きとしては、米国のアルビン・W・ボーグル3号機とフィンランドのオルキルオト3号機の営業運転開始が特筆されます。英国、スウェーデン、カナダなどでは新たな原子力開発計画が発表されました。米国、ベルギー、フィンランドでは既存炉の有効活用による運転期間延長が進められています。2023年に新たに着工したプラントは全て中国製とロシア製で、依然として両国が世界の原子力発電所建設を主導しています。また近年、小型モジュール炉(SMR)開発が活発になっており、欧米諸国で設計認証手続きが進んでいます。原子力産業以外の業界からもSMR開発への関心が表明されたことも2023年の注目点です。

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― 集計結果 ―

■ 中国、ベラルーシ、フィンランド、インド、UAE、米国の6カ国で計7基が営業運転開始
 ドイツ、ベルギー、台湾で計5基が閉鎖

 今回の調査で営業運転開始が明らかになったのは6カ国計7基、766.3万kWであり、その内訳は中国で2基、ベラルーシ、フィンランド、インド、アラブ首長国連邦(UAE)、米国で各1基であった。一方、ドイツ、ベルギー、台湾で5基、638万kWが閉鎖となった。その結果、2024年1月1日現在、世界で営業運転中の原子力発電所は433基、4億1,244万kWで、前年から2基、316.6万kW増加した。世界の原子力発電設備容量は、2018年に記録した443基、4億1,445万kWが最高であり、今回はそれに次ぐ。(調査の結果、出力変更が明らかとなった場合はそれを考慮した。以下同様。)

 米国では、米国初のAP1000、アルビン・W・ボーグル3号機(125.0万kW)が2023年7月31日に営業運転を開始した。米国で新規運転開始は、2016年のワッツ・バー2号機(PWR、121.8万kW)以来である。ボーグル3号機は2013 年に着工したが、途中ウェスチングハウス(WE)社の倒産もあり、建設が遅延し、営業運転開始まで約10年かかった。

 中国では、中国広核集団有限公司(CGN)の防城港3号機(118.8万kW)が1月10日に送電開始、3月25日に営業運転を開始した。防城港3号機は、第3世代のPWR設計であるCGN版「華龍一号」の初号機となる。さらに、中国が独自に開発した高温ガス炉のSMR である華能山東石島湾(HTR-PM、21.1万kW)が12月6日に営業運転を開始した。同機は2012年に着工し、2021年12月に送電開始したが、営業運転開始までに約11年かかった。中国は、運転中の原子力発電設備容量では、米国、フランスに次ぐ世界第3位を維持した。

 ベラルーシでは、ベラルシアン2号機(VVER-1200、119.4万kW)が5月13日に送電開始、11月1日に営業運転を開始した。インドでは、初のインド国産の70万kW級PHWRであるカクラパー3号機が6月30日に営業運転を開始。UAEでは、バラカ3号機(韓国製APR1400、140.0万kW)が2月24日、営業運転を開始した。フィンランドでは、2005年の着工以来、完成まで約18年の長期間を要した欧州初のEPRであるオルキルオト3号機(172.0万kW)が5月1日に営業運転を開始した。

■中国、エジプト、ロシアで新たに計8基が着工、世界で建設中の原子炉は73基、7,464.1万㎾

 2023年中、8基、751.6万kWの原子力発電所が着工した。一方、「建設中」であった7基が営業運転を開始し、世界で「建設中」の原子力発電所は、前年比1基増の73基、出力は前回実績から13万kW減少の7,464.1万kWとなった。

 2023年に新たに着工したのは、中国5基、ロシア2基、エジプト1基の3カ国、計8基。このうち、中国では、中国版AP1000の標準設計CAP1000を採用する海陽4号機、廉江1号機、徐大堡1号機(各125.3万kW)、三門4号機(125.1万kW)、華龍一号を採用する陸豊6号機(120.0万kW)が着工。エジプトでは、エルダバ3号機(VVER-1200、120.0万kW)が着工した。また、ロシアのチュクチ自治管区ナグリョウィニン岬で係留される浮揚型原子力発電所3、4号機(RITM-200C、各5.3万kW)の建設が開始した。エジプトで建設が開始されたエルダバ3号機はロシア製であり、2023年に建設を開始した8基は、全て中国製とロシア製である。2022年に建設開始した10基についても、中国製3基とロシア製7基であり、中国とロシアが新規原子力開発を引き続き主導している。

■中国6基、フランス、カザフスタン、韓国、ウクライナで各2基、ブルガリア1基、     計15基が計画入り

 2024年1月1日現在、「計画中」の原子力発電所は合計89基、9,429万kWである。

 2023年に中国で新規計画入りしたのは6基で、いずれも華龍一号を採用した金七門1、2号機(各120.0万kW)、石島湾1、2号機、太平嶺3、4号機(各115.0万kW)である。フランスでは、最初のEPR2となるパンリー3、4号機(各165.0万kW)、ブルガリアでは、米WE社製AP1000を導入するコズロドイ8号機(125.0万kW)が計画入りした。カザフスタンでは、バルハシ湖西南に位置するウルケン村が建設予定地となるカザフスタン1、2号機(PWR、最大140.0万kW級× 2基)が、ウクライナでは、フメルニツキー5、6号機(AP1000、125.0万kW× 2基)が計画入りした。なお、フメルニツキー4号機は、AP1000からVVER-1000設計に変更したことが判明した。韓国では、2017年に前政権が新ハヌル3、4号機(PWR=APR1400×2基)計画を白紙撤回したが、新政権が計画を復活させたことにより、今回再び計画入りとした。

■ドイツで3基、ベルギーと台湾で各1基が閉鎖

 今回の調査ではベルギー、ドイツ、台湾で計5基の閉鎖を確認した。

 ドイツでは、最後まで運転中だったイザール2号機(PWR、148.5万kW)、ネッカー2号機(PWR、140.0万kW)、およびエムスラント(PWR、140.6万kW)の3基が、2023年4月15日にすべて永久閉鎖され、ドイツは2011年3月時点で所有していた商業炉全17基を全廃した。ベルギーでは、チアンジュ2号機(PWR、105.5万kW)が1月31日に40年間の運転を終え永久閉鎖され、脱原子力政策の下で2基目の閉鎖原子炉となった。2025年までの脱原子力政策をめざす台湾では、2023年3月14日に國聖2号機(BWR、103.4万kW)が閉鎖され、残る原子炉は、馬鞍山1、2号機(PWR、1号機: 98.3万kW、2号機: 97.5万kW)の2基だけとなった。

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