中国、第14次5か年計画を総括する原子力報告書を公表 華龍一号は複数基同時建設へ

出典:中国国家能源局(NEA「中国原子力発電発展報告(2026)」(中国語原題「中国核電発展報告2026」)
中国の国家能源局(NEA)は8月6日、「中国原子力発電発展報告(2026)」(中国語原題「中国核電発展報告2026」)を公表しました。同報告書は中国核電発展中心(中国原子力発電発展センター)などが2026年7月に取りまとめたもので、2025年の実績を中心に、「第14次5か年計画」(2021~2025年)期の動向を総括しています。
2025年末時点の運転中原子炉は59基、設備容量は6,248万kWで、いずれも米国、フランスに次ぐ世界第3位です。一方、国が承認した建設案件は53基、6,293万kWに達し、建設規模では19年連続で世界第1位となりました。両者を合わせると112基、1億2,541万kWで、国別では世界最大です。
技術面では、国が承認した建設案件53基のうち33基を中国の自主開発炉「華龍一号」が占めます。同炉は実証段階を終え、複数基を同時に建設する段階へ移りました。新規原子力プロジェクトの設備国産化率も90%を超えています。このほか、報告書は暖房や産業用蒸気への熱利用の広がりと炉型の多様化を、この5年間の特徴として挙げています。
(「中国原子力発電発展報告(2026)」図1-1、図3-1をもとに当協会作成)
原子力による発電電力量は全国の4.6%、沿岸部では最大28%
2025年の原子力発電電力量は4,852億kWhで前年比7.6%増となり、非化石電源による発電電力量の11.4%を占めました。総発電電力量に占める比率は4.6%にとどまりますが、原子力発電所が立地する沿岸部の省では、その位置付けが異なります。省内発電電力量に占める原子力の比率は、福建省で28.1%、遼寧省で20.9%、海南省で18.5%、広東省で16.9%に上り、いずれも全国平均を大きく上回ります。これらの省では、原子力が主要電源の一つとなっています。なお、全国の原子炉の平均利用時間は7,809時間(設備利用率89.1%)で、前年から126時間増加しました。
5年間で46基の建設を国が承認、運転開始は11基
「第14次5か年計画」期の5年間に、国は46基、計5,450万kWの建設を新たに承認し、11基・計1,245万kWが運転を開始しました。国が建設を承認した基数は、運転を開始した基数の4倍を超えます。
ただし、運転開始は計画が2025年までに掲げた設備容量7,000万kWの目標には届かず、2025年末の運転中設備容量は6,248万kWにとどまりました。
2025年単年では、三門5・6号機、海陽5・6号機、霞浦1・2号機、台山3・4号機、防城港5・6号機の5プロジェクト計10基・1,210万kWの建設を国が新たに承認しました。これらの承認案件の総投資額は2,082.79億元(約4兆8,600億円)とされています。これら5プロジェクトには民間企業10社が出資し、出資比率は最大20%に達しました。中国の原子力事業はこれまで国有企業が担ってきましたが、国有企業に加え、民間資本の参画が進みつつあります。
一方、既に建設が進んでいるプロジェクトへの2025年の投資実績は前年比13.5%増の約1,610億元(約3兆7,600億円)となりました。
華龍一号(HPR1000)は複数基同時建設の段階に
中国が自主開発した第3世代の加圧水型軽水炉(PWR)「華龍一号」(HPR1000)は、国内実証の4基(福清5・6号機、防城港3・4号機)がすべて完成・運転開始しました。これにより同炉は実証段階を終え、複数基同時建設の段階に入りました。国の承認済み建設案件53基のうち華龍一号は33基で、全体の62%を占めます。2025年中に原子炉建屋への初コンクリート打設に到達した9基のうち、6基が華龍一号です。
華龍一号では、鋼製ライナーを工場で製作して一体で吊り込む方式により、施工期間を従来の12~14か月から10~11か月へ短縮しました。漳州3号機では自動溶接ロボットを導入し、溶接効率は手作業の3~5倍に向上、コストは約30%低減したとしています。本報告書は、複数地点で異なる炉型を同時に建設できる施工体制が整ったと評価しています。
華龍一号の改良型は、10年間の建設経験を踏まえ、安全系設計の統一や炉内溶融物保持の技術を採り入れ、安全性の向上を図るものです。177体炉心と3ループ構成は継承したうえで、単層複合式格納容器を採用し、原子炉系統と建屋を簡素化します。これにより、原子力級のポンプ・弁の点数と資材の使用量を大幅に減らし、建設費の低減も図るとしています。ただし、この改良型は実証プロジェクトに向けた前段階の作業が進められている段階であり、現在建設中の33基に適用されているわけではありません。
新規プロジェクトの設備国産化率90%超を達成
新規原子力プロジェクトの設備国産化率は90%を超え、複数基の同時建設を国内の機器供給が支えています。山東石島湾の高温ガス炉実証プロジェクトでは、設備国産化率が93.4%に達しています。
華龍一号や国和一号など、中国が自主開発した第3世代炉については、主要機器と主要材料の全面的な国産化能力が確立されました。世界最大出力の蒸気発生器、世界最大出力のキャンドモータ型一次冷却材ポンプ(主ポンプ)、世界最大出力の湿式巻線モータ型一次冷却材ポンプ(主ポンプ)、世界最大口径の爆破弁のほか、高温ガス炉用のらせん状伝熱コイルや主ヘリウム送風機なども開発しています。
こうした機器の開発と並行して、原子力設備企業は、加圧水型炉と高温ガス炉の一式設備、大型鍛造品、主要材料の供給体制を整え、量産建設向けの主設備需要に対応しています。2025年には、PWRの原子炉周りの主要機器を計47台/セット納入しました。
原子燃料の分野では、加圧水型炉用のAFA3Gが年産1,000トン、AP/CAP1000用が年産400トンの生産能力を整備しています。CF3用とVVER用の燃料集合体、高温ガス炉用の球状燃料についても生産設備を建設中です。本報告書は、こうした産業の供給能力が世界の上位に入る水準に達したとしています。
暖房・産業用蒸気に広がる熱利用
暖房用の熱供給では、中国初の原子力熱供給商用実証プロジェクトである山東海陽の「暖核一号」が、2025年に7回目の暖房シーズンを終え、累計供給熱量は1,432万GJに達しました。現在は海陽のほか、浙江省の秦山、遼寧省の紅沿河、山東省の栄成の計4か所で熱電併給が行われています。暖房の供給面積は計1,975万m²を超えます。
産業用の蒸気供給では、江蘇省・田湾の「和気一号」が、中国で初めて工業用途に原子力由来の蒸気を供給する実証プロジェクトとして運転されています。運転開始からの1年間に、近隣の連雲港石油化学産業基地へ317万トン超の蒸気を供給しました。これは、標準炭換算で26.42万トン、CO₂で70.66万トンの削減に相当するとしています。田湾原子力発電所の蒸気供給能力は年間480万トンとされており、初年度の実績は年間供給能力の約3分の2に当たります。海南でも「和気一号」が中国核工業集団の産業協力モデル地区に蒸気を供給しており、最大供給能力は毎時50トンです。
高温ガス炉、小型炉、溶融塩炉でも実証と研究が進展
自主開発の第3世代炉「国和一号」(CAP1400)は、実証プロジェクトの2号機が2025年に運転を開始し、2基とも完成しました。山東石島湾の高温ガス炉実証プロジェクトは、世界初の第4世代炉の商業実証プラントとして運転中です。海南昌江の多目的小型炉「玲龍一号」(ACP100)も建設が進み、2025年に冷態機能試験を完了しました。
熱出力2,000kWの液体燃料トリウム溶融塩実験炉では、トリウムからウランへの燃料転換が初めて実現しました。また、電気出力120万kW級の商用ナトリウム冷却高速炉CFR1000が標準設計を完了しています。
次期計画は規模の拡大から質の向上へ
エネルギー法の施行により、「原子力発電を積極的、安全かつ秩序立てて発展させる」との方針が法律に明記されました。さらに、原子力分野を包括する基礎法として原子能法も公布されました。
本報告書は今後について、「第15次5か年計画」期(2026~2030年)を、原子力が規模の拡大から質の向上へと転換する新たな段階と位置付けています。同報告書は、暖房や工業用蒸気など多目的利用の余地がさらに広がると見込みます。そのうえで、全国統一電力市場の整備が進むなか、原子力の低炭素価値を制度に反映することが課題になると指摘しています。
中国は2026年3月、2050年までに世界の原子力発電設備容量を3倍にすることを目指す「原子力3倍化宣言」への参加を表明しました。
当協会は、中国、韓国、台湾の原子力産業団体と協力し、「東アジア原子力フォーラム」を開催しています。
2026年10月28日に福岡での開催となる本年は、中国から「中国における原子力の現状と将来の展望」、「原子力発電所の運転:安全対策と長期運転の取り組み・課題」、「原子力人材の確保・育成の取り組み」についてご発表いただく予定です。
東アジア原子力フォーラム公式ホームページ https://www.eanforum.org/
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