COP29・原子力関係活動参加報告

原産協会は11月11日~11月24日にアゼルバイジャン・バクーで開催された国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)に役職員3名を派遣しました。昨年に引き続き、原子力活用による2050ネットゼロを目指したイニシアチブ「ネットゼロニュークリア(NZN)」に、当協会も各国原子力産業界団体とともに参画し、同イニシアチブによって設置されたパビリオンを拠点として、各国からの参加者等に対し原子力に関する訴求活動を行いました。

〇 COP29公式サイドイベントの共催

原産協会は、COP公式サイドイベント「Tripling Nuclear Energy: How to Turn Commitments into Action」を各国原子力産業界団体と共催し、昨年のCOP28で発出された「原子力3倍化の宣言」を実行に移すために必要なことは何か、各国の原子力産業界団体の代表者らと議論しました。

当該イベントでは当協会理事の東京大学有馬特任教授が基調講演を行い(ビデオ登壇)、「ネットゼロへ向かうには各国の強い意志が最も重要だ」と述べました。また後半のパネルディスカッションでは、植竹常務理事も登壇し、「ネットゼロを成功させるためには、各国独自の状況に合わせた市場設計が不可欠である」との発言を行いました。

有馬理事の基調講演(ビデオ)の様子
植竹常務理事は各国産業団体代表らとともに登壇

〇 Net Zero Nuclear (NZN) パビリオンについて

原産協会は、COP29メイン会場にある国・国際機関エリア(Blue Zone)に共同でパビリオンを設置し、産業界団体関係者によるイベント(パネルディスカッションや対話活動)、有識者へのインタビュー(当協会有馬理事へのインタビューを実施)、及び各国の参加者とのネットワーキングなどを実施しました。また、昨年に引き続き、当協会の会員である株式会社IHI及び日揮グローバル株式会社より協賛をいただきました。

NZNパビリオンでのイベント開催の様子 
原産協会有馬理事へのインタビュー

〇 「Nuclear for Climate」(N4C)の活動について

N4Cは、世界150以上の原子力学協会と団体により立ち上げられた国際的イニシアチブであり、当協会は一年目の2015年から毎年COPに向けて参画・協力活動を行っています。例年に引き続き、原産協会はN4Cに対して、各国の原子力産業団体と合同で無料展示ブースの提供、N4CのボランティアメンバーたちにCOP参加パスの提供を行いました。さらに、N4CがCOP開催前に発行するポジションペーパーの日本語版を作成し、原産協会のWebサイトに掲載しました。

会場ではN4Cブースを拠点に若手を中心としたメンバーが会場内でネットゼロ達成に向けた原子力の果たす役割について積極的にPR活動を実施、原子力の気候変動対策への貢献を訴え「世界がネットゼロを達成するには原子力が必要」とのメッセージを発信しました。ブース周辺では多くの参加者が足を止め、N4Cメンバーたちとのコミュニケーションをとる様子が見られました。

N4Cブース前での対話活動
メッセージ入りのステッカーやピンバッジを配布

〇 原産協会が行ったCOP29関連の国民理解促進活動

○ 原産協会が現地で行ったその他の活動

  • 原産会員企業へのNZNスポンサーシップへの協力
  • COP参加者対象の原子力への意識調査を目的としたアンケート実施
  • 各国原子力産業団体代表らとの交流及び今後の協力体制の確認
  • 国内外の原子力関係者との交流及び情報交換

○(参考)今回COPにおける特徴的なイベント

  1. 議長国であるアゼルバイジャンのシャフバゾフ・エネルギー大臣とIAEAのグロッシー事務局長が、原子力を含むエネルギー計画分野における協力に関する覚書を締結しました。同大臣は「アゼルバイジャンは、将来的にクリーンエネルギーとして原子力がエネルギーミックスの一部になる可能性があると見ている」と発言。産油国、産ガス国でこれまで原子力発電と縁の無かった同国が、原子力の価値を積極的に評価したことはCOP全体の雰囲気に多少なりとも影響したと思われます。
  2. 「原子力3倍宣言」に新たに6か国(エルサルバドル、カザフスタン、ケニア、コソボ、ナイジェリア、トルコ)が署名し、賛同国は計31か国となりました。昨年来の原子力推進モメンタムが拡大維持されたかたちです。
  3. 米政府が、2050年までに2億kWeの原子力発電容量を導入し、現在の約1億kWeの設備容量を3倍化する計画の枠組みを発表しました。具体的には、2035年までに3,500万kWの新規設備容量を稼働または着工し、2040年までに導入ペースを年間1,500万kWに加速、拡大し、国内外のプロジェクト展開を支援するとしています。
  4. IAEA と欧州復興開発銀行(EBRD)が、原子力分野の協力関係を拡大する覚書に調印したことで、中東欧、南・東地中海、中央アジア地域における低炭素の未来に必要な投資の促進が期待されます。
  5. 再エネ等の他分野とコラボレーション
    ・COP29会場において20以上の原子力イベント(公式サイドイベント及びパビリオンエリアでのイベント)が開催され、これまでになかった他分野(再エネ(IRENA)など)とコラボレーションしたものも複数確認できました。これまで原子力に反対の立場をとってきたイタリアのパビリオンでも、原子力関連のイベントが下記に記載の通り開催されました。

【主な例】

11月14日(木)

  • Financing the Low-Carbon Energy Transition in Asia and the Pacific(IAEA@ SIDE EVENT 2)
  • Baseload and Beyond: Industrial Applications of Advanced Nuclear Technology(英国・エネルギー安全保障・ネットゼロ省 @英国パビリオン)

11月15日(金)

  • Renewable/Nuclear Energy – The Next Generation of Youth(N4C @Children and Youthパビリオン)
  • Nuclear Energy, a Sustainable Source of Low Carbon Energy for the Arctic(IAEA, CNA, NEI, WNA @北極パビリオン)
  • Financing the Tripling of Nuclear Energy(NEA, NEI @グリーンゾーン ユニバーサルルーム)

11月16日(土) 

  • Energy Innovation: Advancing Sustainable Development through Nuclear and Renewable Solutions (N4C, CNA, WiRE @カナダパビリオン)
  • New Nuclear in Italy for Citizens and Industries: the Role of Decarbonization, Energy Security and Competitiveness(イタリアエネルギー省 @イタリアパビリオン)
アゼルバイジャンとIAEAの覚書締結の様子 
英国パビリオンでの原子力イベントの様子
IAEAパビリオン
METI安良岡氏@IAEA主催イベント
日本パビリオンの展示エリア
COP会場にて(椅子が足りず床に座り込んで
作業や打合せをする参加者)
現地参加した当協会職員
 COP29会場:バクーオリンピックスタジアム

<参考>

〇COP29 「原子力三倍化」へ向けた資金調達を議論
https://www.jaif.or.jp/journal/oversea/25598.html

〇「原子力三倍化」宣言 さらに6か国が署名
https://www.jaif.or.jp/journal/oversea/25581.html

〇IAEAとEBRD ネットゼロ達成に向け原子力協力を拡大へ
https://www.jaif.or.jp/journal/oversea/25617.html

〇Nuclear for Climate が COP29ポジション・ペーパーを発表
https://www.jaif.or.jp/cop29_position_paper/

〇NZN ホームページ
https://netzeronuclear.org

お問い合わせ先:国際部 TEL:03-6256-9313(直通)