国際原子力フォーラムにおける共同声明の発表について

一般社団法人日本原子力産業協会

日本原子力産業協会は、G7気候・エネルギー・環境大臣会合のために主要国の閣僚が集まる機会を捉え、2023年4月16日、米原子力エネルギー協会(NEI)と共同で『国際原子力フォーラム(The Nuclear Energy Forum)』を開催しました。

本フォーラムで、当協会は、カナダ原子力協会、米原子力エネルギー協会、英国原子力産業協会、 欧州原子力産業協会、世界原子力協会とともに、G7のリーダーに対し、共同声明を発表しました。

原子力発電は、地球環境の持続可能性およびエネルギー安全保障に対し、多大な役割を果たします。共同声明は、原子力の活用に向けて、原子力産業界の決意と各国政府への要望をとりまとめたものです。

具体的には以下の通りです。

1.既存の原子力発電プラントの最大限活用

2.新規原子力発電プラント導入の加速化

3.国際協力と原子力サプライチェーンの支援

4.原子力発電への投資を促進する金融環境の整備

5.効率の高い国際的な規制基準の調和と近代化

6.革新的な原子力技術開発の支援

7.原子力に対する社会的理解の促進

8.放射性廃棄物最終処分の実現に向けた取組みを含めたベストプラクティスを共有するための国際協力

9.新たに原子力発電を導入した国、または導入検討中の国への支援

【共同声明本文】

Nuclear industry reaction and recommendation to the G7 Climate, Energy and Environment Minister`s Meeting in Sapporo (April 15-16, 2023)


【共同声明仮訳】

G7気候・エネルギー・環境大臣会合(2023年4月15~16日、札幌)に対する原子力産業界の意見と提言(仮訳)

2023.4.16

各国政府が経済の脱炭素化を目指し、地球温暖化の影響を緩和するために取組んでいる中、原子力はクリーンで持続可能なエネルギーの未来への公正な移行の礎となるものでなければなららない。

必要な規模の脱炭素化を支援するために、国際社会は、既存の原子力発電プラントの運転期間を延長し、新たな原子力発電の導入を可能にする政策を策定し、原子炉技術の新しいポートフォリオの開発を加速させるよう努めなければならない。

原子力は、エネルギーシステムに提供する上で、独自の位置を占めている。すなわち、

  • パリ協定の目標を達成しつつ、世界のエネルギー需要を満たすために、常時利用可能なクリーンで廉価な電力。
  • コンパクトな設置面積で高いエネルギー密度を持つ低炭素電力による生息地と生物多様性の損失低減。
  • 経済成長を促進する質の高い長期雇用の創出。
  • 地政学的、経済的、社会的課題に対するエネルギー安全保障。

これらの特長を総合すると、原子力は、気候目標を達成し、公衆衛生と生活の質を向上させ、エネルギー安全保障と経済繁栄に貢献するクリーンエネルギーの未来の基盤となることができる。

我々は、G7をはじめとする世界の原子力産業を代表する原子力産業団体として、G7の多くが取った前向きな措置を認識し、G7気候・エネルギー・環境大臣が、世界中の人々にとって原子力の利益を最大化するためにさらに有意義な行動を取ることを奨励する。

1)既存の原子力発電プラント(NPP)の最大限活用

国際エネルギー機関(IEA)によると、既存の原子力発電プラントの長期運転は、低炭素発電の最も手頃な形態である。したがって、我々は、各国政府に対し、原子力発電所の運転期間を可能な限り延長することにより、既存の原子力発電プラントの利用を最大化し、脱炭素化、エネルギー安全保障、社会経済開発の目標達成に貢献することを奨励する。これには、運転可能な原子炉の再稼働を支援し、効率的な安全審査を奨励することも含まれる。

2)新規原子力発電プラントの導入の加速化

我々は、2050年までにカーボンニュートラルを達成し、その後もそれを維持できるように、電力市場が原子力の真の価値を認識できるようにするという観点から、各国政府が新規原子力発電プラントの展開について野心的な目標を設定し、実用的な政策手段や効率的なエネルギー市場の枠組みによってその開発を支援することを奨励する。

3)国際協力と原子力サプライチェーンの支援

我々は、各国政府が、(核兵器不拡散条約(NPT)の下で適切であり、原子力供給国グループガイドラインに合致する)原子燃料を含むサプライチェーン能力を開発する取組みを支援し、自国による供給の戦略的独立性を達成しようとするG7諸国などの同志国との協力を促進することを奨励する。

この点で、一部の国は、自国のサプライチェーンにおける追加的な能力の開発、あるいは、特に原子燃料の供給の多様化を目指す同志国との協力を通じて、ロシアからの民生用原子力および関連物資への依存を減らすことを選択するだろう。

我々は、国際的な原子力関連技術に関する知見の共有や、例えば、規格、認証、輸出規制の遵守に関連したサプライチェーンの支援を、同志国間で行うことを奨励する

4)原子力発電への投資を促進する金融環境の整備

我々は、各国政府が、原子力発電が環境に悪影響を及ぼすことなく、気候変動との闘いと持続可能な開発を確実にするために重要な役割を果たすことを、国際金融界に明確に示す政策を確立することを奨励する。例えば、国際的なグリーンおよび持続可能な金融政策の枠組みに原子力を含めることは、原子力発電プラントの展開、拡張、リプレースへの投資を奨励することになる。

5) 効率の高い国際的な規制基準の調和と近代化

我々は、安全・安心を確保し、各国の規制主権を尊重しつつ、先進的原子力技術を含む原子力の効率的な展開を可能にするため、各国政府が規制枠組みの調和と近代化を推進することを奨励する。国際的な規制の効率化は、レビューや規範・基準を含む各国規制当局間の協力を通じて推進されるべきであり、最終的には複数の国にわたって標準化された設計の展開を可能にする。

6)革新的な原子力技術開発の支援

我々は、小型モジュール炉やその他の先進的な技術など、安全性や経済性に貢献する革新的な特長を持つ新しい原子力技術の開発、実証、展開に対する支援を拡大することを政府に奨励する。革新的な原子力技術の加速度的な展開による社会実装は、再生可能エネルギーとの相乗効果、水素製造、熱利用など、社会のニーズに応えるものである。

7) 原子力に対する社会的理解の促進

我々は、各国政府が、原子力エネルギーがエネルギー安全保障と気候変動緩和の政策目標の達成にどのように貢献するかについて、国民の認識と理解を高めるための措置を講じることを奨励する。

8) 放射性廃棄物最終処分の実現に向けた取組みを含めたベストプラクティスを共有するための国際的協力

使用済み原子燃料の管理、放射性廃棄物の最終処分、原子力分野における循環型経済への貢献を高めるための活動など、各国の取組みによって得られた経験や知識を共有するよう、各国政府に奨励する。

9)新たに原子力発電を導入した国、または導入検討中の国への支援

私たちは、国際原子力機関(IAEA)のような多国間協力の枠組みを含め、エネルギーシステムの脱炭素化と増大するエネルギー需要を満たすための有効な手段として、原子力を新たに導入した国や現在導入を検討中の国を政府が支援することを奨励する。

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なお、本フォーラムでは、日本、カナダ、フランス、英国、米国の政府による民生原子燃料協力に関するステートメントが公表されました。

内容は以下をご確認ください。

Multilateral Fuel Statement

【仮訳】燃料ステートメント


お問い合わせ先:情報・コミュニケーション部 TEL:080-2260-6466(直通)