ウクライナの原子力発電所の状況 #136


◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第220号(現地時間2024年4月7日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー国際原子力機関(IAEA)事務局長は、ドローンが本日、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)サイトを攻撃したことを明らかにした。これは、原子力安全およびセキュリティへの深刻な脅威である。

欧州最大の原子力発電所であるZNPPが軍事行動の直接的な標的となったのは、2022年11月以来である。このことは、昨年5月に国連安全保障理事会でグロッシー事務局長が設定した原子力施設を守る5つの基本的原則に対する明らかな違反である。

グロッシー事務局長は、「ドローン攻撃は、ザポリージャ原子力発電所が直面する原子力安全およびセキュリティの危機を大幅に拡大させるものである。このような容赦ない攻撃は、重大な原子力事故のリスクを著しく高めるものであり、即刻中止すべきだ」と述べた。

現時点では、重大な原子力安全やセキュリティ・システムへの損傷の兆候はない。しかし、ウクライナ内外で人々と環境に害を及ぼし得る重大事故のリスクを低減させるIAEAの努力にもかかわらず、今回の軍事行動は、紛争中のZNPPとその他原子力施設への根強い脅威を改めて思い起こさせるものである。

グロッシー事務局長は、「安全保障理事会やIAEA理事会などで繰り返し述べているように、原子力施設への攻撃から誰も得るものはなく、ましてや軍事的・政治的利益を得ることはあり得ない。原子力発電所への攻撃は絶対にやってはいけない」「私は軍の意思決定者に対し、原子力施設を保護する基本原則に違反するいかなる行動も慎むよう強く訴える」と述べた。

ドローン攻撃についてZNPPから報告を受けた後、ZNPPに駐在するIAEA専門家チームは、攻撃を受けた3か所を確認した。専門家チームは、監視や通信機器が標的にされたと思われる6基の原子炉建屋の1つを含め、ドローン攻撃による物理的影響を確認することができた。専門家チームが6号機の屋上にいる間、ロシア軍は接近してくるドローンのようなものと交戦した。その後、原子炉建屋付近で爆発が起きた。

IAEAチームは、この地点と、その他2か所の交戦地点でドローンの残骸を目撃したと報告した。そのうちのひとつでは、研究所の外で、損傷した軍用兵站車両の横に血痕があり、少なくとも1人の死傷者が出たことを示していた。

専門家チームは一日を通して、サイトで爆発音や小銃の射撃音を耳にしていると報告した。さらに、IAEAチームは、プラント付近から、数発の砲声を聞いた。チームはこれまでのところ、プラントの原子力安全あるいはセキュリティに重要なシステムや構造物、コンポーネントに構造上の損傷を確認していないが、6号機の原子炉ドーム屋根上部に表面的な軽度の焦げと、一次補給水貯蔵タンクを支えるコンクリートスラブの傷を確認したと報告した。

グロッシー事務局長は、「6号機の損傷は、原子力安全を損なうものではないが、これは原子炉格納システムの完全性を損なう可能性のある重大な事象であった」と述べた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-220-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

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