ウクライナの原子力発電所の状況 #202 #203


お知らせ:今回を持ちまして、 IAEAウクライナ声明の仮訳のご紹介を終了させていただきます。

◆ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第287号(現地時間2025年4月17日)[仮訳]

ラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は、ウクライナのザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に拠点を置くIAEAチームが本日、ドローンが撃墜されたとされる同プラントの訓練センター付近のエリアを調査したことを明らかにした。今回の出来事は、軍事紛争中の原子力安全への潜在的なリスクを改めて浮き彫りにしている。

IAEAは、ZNPPからこの事象が現地時間水曜日(4/16)の午後に発生したという情報を受け、墜落現場とされる現場へのアクセスを要請。ZNPPによると、墜落により火災が発生し、周囲の植生が燃えたが、死傷者や訓練センター自体の構造的損傷はなかった。訓練センターは、敷地境界のすぐ外側に位置している。

墜落現場では、IAEAチームは狭い範囲で散らばっている白い灰やZNPPがドローンの残骸と特定したものを確認した。その中には、地上にまだ横たわっている4つの小型電気モーターもあった。明らかにドローンの機体の一部と思われるプラスチック片も確認された。

数か月前にも、ZNPPの同じ訓練センター付近で同様の事象が発生している。2025年2月、ウクライナ北部のチョルノービリ・サイトにある新安全閉じ込め構造物(NSC)がドローン攻撃によって甚大な被害を受けた。ウクライナの他の原子力サイト付近でも、ドローンが頻繁に目撃されているという報告がある。

「ドローンによる原子力サイトへの攻撃は、いかなる場合も深刻な結果を招く可能性がある。攻撃用ドローンは比較的小型であっても、火災や構造物の損傷を引き起こすなど、原子力安全に深刻な影響を及ぼす可能性がある。引き続き、あらゆる原子力サイト付近での軍事活動の最大限の自制を要求する」とグロッシー事務局長は述べた。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-287-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine

ウクライナの状況に関するIAEA事務局長声明 第286号(現地時間2025年4月16日)[仮訳]

国際原子力機関(IAEA)のラファエル・マリアーノ・グロッシー事務局長は本日、頻繁な空襲警報、付近で定期的に聞こえる爆発音、ドローンの存在が、軍事紛争中のウクライナの主要原子力サイトが直面する危険を引き続き浮き彫りにしていると述べた。

グロッシー事務局長は「ウクライナの原子力安全とセキュリティの状況は、依然として不安定である。これは、現地のIAEAチームの日々の報告からも明らかだ。原子力サイト周辺では、依然として軍事活動が行われており、安全性が常に危険にさらされている。原子力事故防止に向けた我々の取組みは、まだまだ終わらない」と述べた。

IAEAは、ウクライナの5つの主要な原子力施設における原子力の安全性とセキュリティの監視と評価を継続し、医療支援を含む必要不可欠な機器やその他の技術支援を提供している。

ザポリージャ原子力発電所(ZNPP)に拠点を置くIAEAチームは過去1週間、ほぼ毎日、さまざまな距離から爆発音のほか、銃声を時折耳にした。

サイト内の定期巡回の一環として、IAEAチームは2基の原子炉のタービン建屋を視察したが、またもや建屋の西側への立ち入りは許されなかった。また、チームはサイトの水処理施設を視察し、廃水処理の体制を確認したほか、非常用ディーゼル発電機の試験状況を視察した。

南ウクライナ原子力発電所で、IAEAチームは4月11日から12日の夜にかけて、発電所から西へ2kmの地点で5機のドローンを探知したとの報告を受け、その後、撃退を目的としたと思われる銃声を耳にした。

チョルノービリ・サイトでは、IAEAチームが新安全閉じ込め構造物(NSC)を訪問し、2月中旬にドローン攻撃で構造物に穴が開いた後の状況に関する最新情報を得た。放射線レベルは当該地域の正常範囲を維持しており、設定された基準値を超える放射性物質の放出は確認されていない。

IAEAチームの報告によると、この2つのサイトではここ1週間、ほぼ毎日空襲警報が鳴っているという。

IAEAは過去1週間、原子力安全とセキュリティの確保を支援する取組みの一環として、機器の追加調達を5回実施しており、紛争開始以来の調達回数は計130回にのぼる。

リウネ原子力発電所では、ノルウェーの資金援助を受けて、ドイツで改修・アップデートされた2台の静的試験用ベンチが届けられた。プラントスタッフは、新たに自動化されたシステムに関する研修も受けた。これらの試験ベンチは、冷却ポンプ、蒸気発生器、その他原子力安全にとって不可欠な機器の振動を低減する油圧ショックアブソーバーの試験に使用されている。

その他の機器は、チョルノービリ、使用済み燃料集中乾式貯蔵施設、そして放射性廃棄物を管理する国営専門企業「ラドン協会」に納入された。これらは、欧州連合、デンマーク、スウェーデンの資金援助によって実施された。フメルニツキー原子力発電所には、ノルウェーの資金援助を受けて医療機器が納入された。

https://www.iaea.org/newscenter/pressreleases/update-286-iaea-director-general-statement-on-situation-in-ukraine


※日本原子力産業協会は、ウクライナの原子力発電所及び都市名等の名称については、ウクライナ語および表記・発音に基づく以下の表記を使用します。
 フメルニツキー、リウネ、南ウクライナ、ザポリージャ、チョルノービリ(チェルノブイリ)、
 キーウ(キエフ)、ハリキウ(ハリコフ)

※ロシア軍によるチョルノービリ原子力発電所の占拠期間:2022年2月24日~2022年3月31日

 ロシア軍によるザポリージャ原子力発電所の占拠期間:2022年3月4日~

お問い合わせ先:情報・コミュニケーション部 TEL:03-6256-9312(直通)